アート・ラボ・トーキョー自らを「黄金の国に生まれた貧乏児」と称す樽屋タカシが、金箔画に魅了されるまでには多くの時間と経験が費やされた。毎日のように借金取りが土足で家に上がり込む子供時代を過ごし、空腹を満たすために海岸からワカメと貝を集めたり、水道や電気を止められるのも日常茶飯時。必然的にハングリー精神を養った樽屋は、必死で手に職を求めるように美大に入るが、もうその頃から、国内外で店舗内装を中心とする巨大壁画や天井画の制作を職業として営むようになり、その独自の色彩感覚による壮大な空間作品づくりが大反響を呼ぶ。
さまざまな国で制作を繰り返していくうちに、樽屋は日本人としてのアイディンティティーを何度も追求され、森羅万象には八百万(やおよろず)の神が宿るとするアニミズム的な世界観「古神道」を精神的ルーツとする自国を客観的に見つめるようになる。「需要と供給が成り立つ一方、進まない自然保護への意識レベルの低下。」これが外から見た黄金の国と言われたジパングの姿であった。この頃から、樽屋は日本古来の伝承文化とそこに宿る精神への探求をはじめ、日本の輝かしい伝承文化である金箔にも手を出すようになる。
「付喪神(つくもがみ)」とは、年月を経た道具や家畜に宿るとされる神々のことで、人々に畏怖の念を抱かせ、ものを大切にする精神に立ち返らせてくれる存在。人間の欲求によって大量の資源消費を繰り返してきた今、付喪神たちに学ぶものがあると思い、室町時代より絵師達が繰り返し模写してきた伝承を、樽屋は独自の視点と、自然環境保護にまで配慮した技法で現代に蘇らせた。
パネルは、大気汚染の原因となる準揮発性有機化合物(TVOC)1%未満の接着剤を使った木製の総桐パネルで、作品を長く楽しんでもらうために表面湿布するコーティング材には、天然ヒノキチール配合の水性エコ塗料を使用。金箔は贅沢に2回重ね、意図的に均等かつ綺麗に貼らないようにして、年月を経たかのような趣をだしている。
[画像:「付喪神夜行図―神々の行進」(2009) 木製パネル・銀箔・アクリル 803x1303mm]
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