神奈川県立近代美術館 葉山明治時代末から大正時代にかけて、20世紀の初頭には、ヨーロッパの芸術に新しい生を見出して激しい憧れと熱い思いをたぎらせた新世代の人びとが数多く登場します。なかでも、雑誌『白樺』を刊行した青年たちは、自分たちが愛着を寄せる美術をその誌上に熱心に紹介し、数々の展覧会を開いて、美術の魅力を広く訴えかけていきます。彼らの西洋への憧憬は、同時代の人びとを深く揺るがせて、その後の日本の文学や美術を方向づけていきました。
雑誌『白樺』の誕生100年を迎える今年、その同人たちや『白樺』に関わった人びと「白樺派」が、その時代に何を刻印し、私たちの時代に何を残響させているのかを改めて考えてみようというのが、本展覧会の趣旨です。
『白樺』の活動は、文芸と美術の領域を中心に展開されました。本展覧会では、美術に焦点を絞り、白樺派がどのような美術家を紹介し、どのような視点から西洋美術への共感を示したか、そして彼ら自身がどのような美術を生み出したかを、実際の作品を通して見るとともに、資料によって白樺派の幅広い活動を探っていきます。有島生馬(1882-1974)、志賀直哉(1883-1971)、武者小路実篤(むしゃこうじさねあつ:1885-1976)、木下利玄(きのしたりげん: 1886-1925)、児島喜久雄(こじまきくお:1887-1950)を始めとする同人たちは、『白樺』に携わった後も、それぞれに個性的な仕事をしたことは言うまでもありません。しかし、本展覧会では創刊(1910/明治43年)から終刊(1923/大正12年)までの、美術の領域での彼らの活動と時代との関わりを振り返ります。展覧会は、「第Ⅰ章 西洋美術への熱狂」、「第Ⅱ章 白樺派の画家たち」、「第Ⅲ章 理想と友情を求めて」の3章で構成されます。
ルノワ-ル、ロダンら何人もの西洋の画家や彫刻家は、『白樺』によって日本で初めて本格的に紹介され、共感の波紋を一挙に広げました。西洋美術に対する今日の私たちの愛着の根は、まさしく『白樺』の時代に発しており、私たちの美術観にも彼らの視点がずいぶん反映されています。その時代を探り楽しむことは、私たちの文化の成り立ち、感性の仕組みを考えることにほかなりません。
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