GALLERY SPEAK FOR角田光代、江國香織、スティーブン・キングら人気作家の著作をはじめ、年に約50冊ものペースで書籍・雑誌の装画を手がけるなど、松尾たいこ氏は98年のデビューから10余年、常に日本のイラストレーション界のヒットメーカーとして注目を集めてきました。伸びやか、かつ繊細な筆致が、ある時はヴィヴィッドな色彩によるフュージョンを奏で、ある時はシックな色合いで謎めいたファンタジーを囁きます。一度見たら彼女だとはっきり分かる作風ながら、その絵でしか語れない複雑なイメージ/カルチャーがあり、そこに多くのクライアントが魅せられてきたのです。
松尾氏の最近の人気シリーズに「和風」モチーフのものがあります。もともと無国籍フレーバーを放ち、翻訳書の装画などを手がける機会が多かった彼女に、和の世界との決定的な出会いを与えてくれたのが「日本の古典をよむ」シリーズ(小学館)の装画の仕事でした。「古事記」「日本書紀」から始まり「源氏物語」「風姿花伝」や松尾芭蕉まで、有名な古典作品を読みやすい現代語訳で集め、2007年から毎月1冊ずつ刊行されてきた大好評シリーズの全カバーを担当。鶴や龍、丁髷の人物など典型的な和のモチーフや日本的情景を、色彩豊かでファンタジックな松尾たいこの世界の中で受け容れ続け、このシリーズの趣旨を鮮やかに提示してきたのです。
今回の展示は「日本の古典をよむ」全20巻の配本完結を機に企画されました。「万葉集」の歌から取った、ビジュアルで詩情豊かな一節をタイトルとし、同シリーズの表紙を飾った原画全20点のみならず、折に触れ発表してきた和ものの作品も展示・構成。限定品のオリジナル帯や手ぬぐいなど楽しい和装アイテムも販売されます。彼女へ新しい境地を切り拓かせてくれた和の世界の奥深い魅力と、それを受けとめて進化した松尾たいこワールド、双方の醍醐味を味わえる機会となるでしょう。
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