ファーブル8710末むつみは、トレーシングペーパーやオイルペーパーなどの特殊紙にボールペンを用いて多くの作品(ドローイングを含む)を描いてきましたが、ここ数年目立つのは、キャンバスや紙などの支持体に油絵の具やアクリルなどを用いて描いた作品が増えてきたこと。
末むつみ作品に頻繁に登場する、くるくると描かれたループ(かたちやサイズ、強弱などは異なるものの)は、ある時には壮大な風景を、ある時には心象風景をあらわしているかのようです。また、じょじょにスライドしながら進化し生まれる一つひとつの作品は、実験的精神と作家のなかにひそむ原始的な感覚、原初体験のようなものがまざり合った結果かもしれません。くるくると描かれたループ状の模様のようなものは、末むつみ作品の土台や状況といった存在から、近年では次第に作品のモチーフというべきかたちへと変化してきたようにも見受けられます。このように抽象性から具象性へと作品自体の見え方(見せ方)のベクトルが変化してきているのも最近の末作品には顕著に見られます。
fabre8710東京移転後初個展となる今回の「私 × 絵」では、B1・B2Fのスペースを使った展示となります。展覧会タイトル「私 × 絵」が言いあらわすかのように、作家本人と作品(絵)とが掛け算された空間をめざしています。
末むつみ自身、絵を描いている途中立ち止まってしまった時に、いったん絵から離れ、それでも絵のことを考えながら生活をしている中で、ふとしたことでその求めていた具体的なものを見つけることが多々あるといいます。そして、ふたたび絵の世界に没頭し、ふとまた立ち止まる。そのようなことが繰り返されて作品がかたちになっていきます。
「私」と「絵」の間を行ったり来たりしているなかで彼女独自の世界が紡がれていくのだといえるのではないでしょうか。この作家のライフスタイルと作品制作プロセスとの掛け算のような作品たち(作家自身による「私」と「絵」との往復)を、ぜひとも皆様一人ひとりに体感していただきたいと考えています。
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