スパイラル福士朋子は、ホワイトボードやマグネット、ダーツや油性マジックなど、誰でも手に入るありふれた大量生産品と親しみのある漫画の手法を使い、自分の小さな思いつきや心の中のつぶやきを等身大で描きます。たとえば、機内食の肉料理と魚料理を選ぶときの戸惑いなど、ふとした時にぼんやりと頭の中で思い描く想像や独り言のようにささいなエピソードで、そこには、社会にインパクトを与えるような「大きな物語」はありません。
とるに足りない個の声を顕在化させる福士の試みは、私たち現代を生きる個人がどれほど声を上げてもなかなか思う通りに進まない時代の閉塞感やもどかしさを感じさせます。 同時にTwitter の出現によって、パーソナルな声の集積が社会の大きなうねりを産み出しうる今日において、個人の「小さな声」が国をも転覆させかねない力を持ち始めた今という時代の流れとも共振します。
本展では、複数のドアを持ち、出入りの流れが複雑なショウケースという空間を読み説き、「出口/入口」をテーマにインスタレーションを展開。ショウケースをオフィスに見立て、ロッカーが並ぶ無機質な空間に新作を展示します。 繰り返される昨日と今日が区別できないような日々。出口の見えない毎日の中で生まれては消えていくささやかな思いや、つぶやき。日の目を見ることのなかった「小さな声」が形を持った時、そこには、明日を変える大きな力が潜んでいるのかもしれません。
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