足利市立美術館「生きることは絵を描くことに価するか」これは長谷川利行(1891-1940)の言葉です。逆説のように聞こえますが、彼にとって生きる実感を得られるのは描いている時だったのではないでしょうか。生きているから描けたのではなく、描いていたから生きていけたと思えてなりません。彼は生活のほとんどを捨て去っています。居所を定めず、職を持たず、家庭もなく、最後は行倒れとして養育院に収容され、誰にも看取られずに死去しました。しかし、どんなに生活がすさもうとも、あるいはすさむほどに、のびやかで、美しい、自由な絵が生まれ、私たちの許に遺されました。利行は京都に生まれ、20代まで文学に傾倒し、短歌を詠む傍ら水彩画を描いていました。30歳頃上京し、やがて本格的に絵を志します。36歳で二科展樗牛(ルビ ちょぎゅう)賞を受賞、一躍画壇の中央に躍り出ます。利行が画壇で活躍したのは、この頃から49歳で命果てるまでの約15年間という僅かな年月でした。これは、関東大震災後の復興期から太平洋戦争直前までの期間に重なります。浅草や山谷、新宿の簡易宿泊所を転々と放浪し、いわば街そのものがアトリエでした。鮮やかな色彩、奔放な筆触でバーやカフェの賑わい、そこで働く女給や人々を生き生きと描きました。
本展では、近年再発見された《カフェ・パウリスタ》《水泳場》、約40年ぶりの公開となる《夏の遊園地》、そして新発見の大作《白い背景の人物》など、話題作を含む約140点で長谷川利行の画業の全貌を紹介します。凄まじくも美しい輝きに満ちた利行の作品をお楽しみください。
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