shop & gallery FL田SH(フレッシュ)この度、FL田SHでは吉良加奈子個展・この星のピッチを開催いたします。
生活の中での些細な出会いの瞬間を作品制作の基礎構造とし、制作過程に偶然性や緩やかな未完成領域を練りこむことによって吉良の作品は「開かれ」た状況を作りだし、鑑賞者すらも作品の内側へと誘う。
2019年から継続して制作と発表をおこなっている『旅する犬』の源流は古道具屋で販売されていた金属の給食トレーの裏側に描いてあった作者不明の犬の落書きであり、徹底的になぞり、反復し、拾った石の裏に刻み込み続ける。その石はギャラリー空間に設置、もしくは吉良自身によって街路に設置され、その様子はオンラインのSNSメディアであるインスタグラムによって映像共有され、それはまるで宝探しであり鑑賞者に作品への参加を促す、ここでは当初の名もなき犬の作者は遠くに置いて行かれている。
嵐の次の朝に出会った壊れた飛び出し坊やと電動の自動掃除機ルンバを組み合わせた『在るべき姿』では、作品の主体は飛び出し坊やになっており、取り付けられたスピーカーからは坊やの心中語りがインサートされる。ここでも飛び出し坊やという作者不明のモチーフを主体とし、倒れていた看板を吉良自身が魔改造し、再度立ち上げる、そこに『在るべき姿』というタイトルでまとめ上げることでちぐはぐな偶然性を物語化することに成功している。 『旅する犬』も同様に主体は制作者不明の犬の落書きとなっている、ここでも散らばった記憶や物語を緩く結びつけることにより豊かな美術を展開している。このように出会いの偶然と共生することで有機物や無機物、自身のエゴをも乗り越えていく。
コロナによってギャラリーやシアターその他様々な人々が集う芸術空間の総称としての『箱』の状況は大きく変わってしまった。芸術を救えるのは芸術だけかもしれない、コロナと共生するべき新しい時代が始まってしまった。新作である『ART』はAとRとTのバルーンが風にのって空に消えていく、この時代にソーシャルディスタンスを命じられ彷徨うARTの魂のようでもある、見えないコロナウイルスと共生する希望を持ってダンスを踊っているようでもある、あの風船はそのような希望を持って新しい地平を目指して彷徨い続ける。
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