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城蛍 「海に食べられる」

マキイマサルファインアーツ
終了しました

アーティスト

城蛍
「壁に飾ることがどんどん難しくなっていく、私の絵は」と城蛍は自分の作品について振り返ります。活動初期から一貫し、彼女は絵が施されたキャンバスやパネル、それから彫刻刀などによって造形された木枠が一体となった作品を制作してきました。それらはすべて光景をモチーフにしており、それはどこかの知らない誰か、道路に落ちている石、亡くなってしまったひとの魂、蛾の集まっている街灯、いつかの自分自身といった特定もしくは不特定の人物、あるいは物体の視点から見た光景であり、その視界そのものが絵として作品に描き出されています。

彼らが見ている景色は、作家本人の言葉を借りるならば、常に負を孕んでいます。どこかに違和感や気持ち悪さ、苛立ち、暗さや怖さ、ズレといった歪んだ感覚を内包した者たちの光景です。そのモチーフを作品に取り込むことは、制作においては彼女の絵画それ自体の形態にも影響を及ぼし、キャンバスやパネルはその外側、厚さ、そして裏側までも歪ませ、あたかも彫刻的な半立体の姿へと変形していきます。

マテリアルを侵食するひずみを受け入れる一方、城は「負の光景をきれいなものとして描きたい」と話します。自身の制作を浄化という言葉で言い表す彼女は、だからこそ淡いタッチや色づかいを使用し、あたかもそれにゆるしを与えるかのような穏やかさ、感覚的な暖かさを作品に与えます。

今回の展示タイトル「海に食べられる」とは、城が近年に感じている皮膚感覚のアレゴリーであり、同時に今回の展示空間に与えられたテーマでもあります。「長く感じる時間と短く感じる時間があって、長い方には音がなくて、短い方には音がある。この展示ではそれを意識した。個々の作品自体というよりは展示そのものとして」と城自身が話している今回の展示では、その音という言葉によって形容される、対外的に存在し、「私」に向かって影響を与える何か、そしてその何かに呑まれている身体感覚にフォーカスしています。

それはある意味では、城が制作のテーマそしてモチーフとしている、「負の光景」について違った観点から捉えたものと言えるでしょう。彼女は違和感やズレ、かすかに感じる奇妙さを含んだ視点を作品化しますが、それを踏まえて今回の展示を見ると、その負が生み出される状況に視野を広げている様子を読み取ることができます。それは、喩えて言えば、私たちを覆うように存在している「何か」との関係における皮膚感覚を、造形的な言語で物語ろうとすることと言えるかもしれません。

今回の展示に登場する作品も、そして城蛍がこれまでに制作してきた作品も、そのどちらにも共通して言えることは、彼女が制作において一般的な絵画の形状に止まらず、作品に対して自由な造形の可能性を追求していることでしょう。現在のような作品を手がけたきっかけについて「キャンバスの四角さが窮屈だった」と振り返る城は、そのメディウムに対する違和感と格闘するように絵画の形態を大きく逸脱し、ごく自由に造形を行います。だからこそ、彼女に作品に対峙する時、そこにはまるで私たち人間や他の全ての動物、あるいは樹木に宿っている生命が自らの体をつくり出していくような、物体とその形に対する強い意志、言い換えるならば造形の膂力とも言える、美術の根本的な強さと自由を感じ取ることができるのかもしれません。

スケジュール

2021年3月13日(土)〜2021年3月28日(日)

開館情報

時間
12:0019:00
最終日は17:00まで
休館日
月曜日、火曜日、水曜日
入場料無料
展覧会URLhttp://www.makiimasaru.com/mmfa/archive/2021/0313/index.html
会場マキイマサルファインアーツ
http://www.makiimasaru.com
住所〒111-0053 東京都台東区浅草橋1-7-7
アクセスJR総武線浅草橋駅東口より徒歩2分、都営浅草線浅草橋駅A3出口より徒歩2分
電話番号03-3865-2211
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