Alt_Medium篠田優は東京を中心に、展覧会や作品集の出版など精力的に活動する写真家です。太平洋戦争時代に建設された遺構や、取り壊しを控えた公共建築などを主な被写体として、大判フィルムカメラや4K動画による精緻な描写によって、記録性と表現性を兼ね備えた写真・映像作品を制作しています。
本展覧会では、篠田が現在まで継続している東京湾沿岸に取材した写真や映像を組み合わせて発表します。
篠田は2015年から、三浦半島と房総半島という東京湾を形成するふたつの土地の沿岸部に残された遺構を訪ね歩き、写真に記録するプロジェクトを現在まで続けています。その被写体の大半が太平洋戦争末期に掘削された壕であり、作者はその内部に残された往時の掘削痕や開口部から見える現在の光景を写真に捉えてきました。
また同時に篠田は、そうした壕や砲台といった遺構、そしてその周囲の様子を高精細な動画で撮影した映像作品も制作しています。そこでは、かつての軍事的な施設が観光地へと変貌したり、草生したりして日常の景色の中へと埋もれている様を客観的に見て取ることができるでしょう。
さらに近年では、京浜や京葉の工業地帯における汀に着目して写真作品を制作しています。近代以降、この国の工業化を牽引してきたそれらの土地において、波打ち際とは、資本によって囲繞され、そこへの容易な接近を拒む場所といえます。人々の営む日々の生の周縁部に位置するそうした土地の様子は、かえって我々の生活が現在どのような力のもとに構成されているかを、中心部よりも如実に顕にしているといえるでしょう。
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