トーキョーアーツアンドスペース本郷私たちは、世界を知覚する器官として、身体という構造をもっています。ひとりひとりが、コミュニケーションを生成する主体として、周囲に存在する他者を認識し、外部へと関わりを築いていきます。
しかし、なぜ世界には、ただひとつではなく、いくつもの「身体」が存在するのでしょうか。身体の複数性は、ひとつに、生殖機能を持ち合わせていることに起因します。人間は、複数の身体からしか生まれず、現生人類が誕生したとされる約20万年前から、数えきれないほどの身体と身体の営みが堆積した歴史の上に生きています。
一方、医療技術の進歩により、人間は臓器や血液といったある個人の肉体の一部を取り出し、必要とする別の個人の体に移すことで、複数の人間の身体の一部が内在するひとつの身体を生存させることを可能にしました。また、日常生活におけるデジタル世界の浸透は、個人の身体をヴァーチャルによって複数化させていきました。アバターや、アプリで加工されイメージ化された身体は、現実とは異なる多次元的な様相によって、複数のアイデンティティを形成していきます。
本展では、身体の複数性をテーマに、身体を起点とした表現を追求する3名のアーティスト、敷地理、庄司朝美、マリオン·パケットを紹介します。敷地は、言葉になる前のコミュニケーションとしてのダンスにより、相手との間に生まれる感覚を、互いの身体に移植させて内在化させることを探究します。庄司は、自身の身体をとおして探る世界を絵画空間に落とし込み、鑑賞者と自身の身体を往来するような絵画体験を生み出すことを試みます。パケットは、公共空間と私的空間の境界を曖昧にし、自己と他者が関わり合いながら共存する集合的身体を浮かび上がらせます。彼らの作品は、互いに影響し合う身体の繊細な関係性や、その多元的なあり方を映し出し、人間が根源的にもつ身体的な想像力やその感受性を再認識させ、新たなる身体の可能性を予感させてくれるでしょう。
※「ACT(Artists Contemporary TOKAS)」は、 トーキョーアーツアンドスペース(TOKAS)のプログラム参加経験者を中心に、今注目すべき活動を行う作家を紹介する企画展です。
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