フジギャラリー新宿青木愛弓(1982―)は、水面の煌めきや季節によって変わる光、自然の色彩、記憶の中に残る情景などを手がかりに、現実には存在しない風景を描いてきました。ちぎった水彩紙や和紙によるコラージュとアクリル絵具のブラシストロークを重ね、色と形の断片を一つの風景へと構成しています。刻々と姿を変え、やがて失われていくものの美しさを見つめるその作品には、 「もののあはれ」 や 「うたかた」 に通じる日本的な美意識が息づいています。これまでの作品では、色や形が画面を横、あるいは縦方向へ流れるように展開する構成が多く見られました。本展で発表する新作では、大きな形や筆致が斜めに交差し、複数の方向へ広がることで、画面の動きがよりダイナミックになっています。明るい黄や緑、青、白と、深い黒や紺とが入り交じり、まばゆい光とその陰にある気配までを含んだ、奥行きのある夏の景色が生み出されています。 「夏をとどめて」 というタイトルには、鮮烈でありながら移ろいやすい夏の光や色彩、遠い記憶を、絵画の中に抱きとめたいという思いが込められています。幼い頃の夏、いつか過ごした夏、今まさに目の前にある夏。本展では、見る人それぞれの記憶とも重なり得る、多様な夏の情景を描いた新作を紹介します。
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