MEDEL GALLERY SHU OMOTESANDOMEDEL GALLERY SHUでは、2月14日(土)より3月1日(日)まで野澤梓個展「still fragment」を開催いたします。
野澤梓は、2019年に東京藝術大学美術学部絵画科油画専攻を卒業した弊廊を代表する画家です。高校生の頃から展示をはじめ、大学を卒業する頃には既に人気作家として高い注目を集めています。約2年ぶりに新作発表する個展を開催いたします。
本展は、「記憶の分解と再構築」を主題に、断片(fragment)、揺らぎ(blur)、残存(remain)という要素を軸に構成されています。記憶は決して完全な形で保存されるものではなく、欠片として立ち上がり、その一部分に感情や愛着を宿しながら、時間のずれや曖昧さを伴って層状に積み重なっていきます。
野澤梓の絵画において、像は固定された輪郭や明確な意味を持つ存在としてではなく、消えかけ、重なり合い、部分的に欠落した痕跡として現れます。描かれる人物像は特定の物語や主体を指し示すものではなく、記憶の中に残る気配や残像として画面に留まり続けています。そこには喪失の感触と同時に、なお「残っている」ものへの静かな眼差しが感じられます。
線と面、境界と空白を等価に扱う造形的態度は、形の輪郭を不確かなものとし、存在の境界そのものを揺るがします。境界であるはずの線は空白として現れ、あるいは周囲の面に溶け込みながら、固定されたアイデンティティから解放された存在のあり方を浮かび上がらせます。背景は単なる余白ではなく、記憶が沈殿し、時間が堆積する「場」として機能し、静かな哀しみと微かな希望が共存する空間を形成しています。
本展に並ぶ作品群では、野澤がこれまでも用いてきた〈スティッカーボム〉の表現にあらためて立ち返り、断片的なイメージを集積する制作の方法が見られます。ただしそれは技法の提示そのものを目的とするものではなく、記憶が立ち上がり、揺らぎ、なお留まり続けるその運動を可視化するための構造として機能しています。《Still Fragment》は、消えかけながらも確かに「まだここにあるもの」に目を凝らし、鑑賞者自身の記憶と静かに向き合うための場となるでしょう。
ぜひご高覧いただきますよう、よろしくお願い申し上げます。
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