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[画像: Cerith Wyn Evans, “F=O=U=N=T=A=I=N”, 2020, white neon, 382 x 1084 cm Courtesy of White Cube]

ケリス・ウィン・エヴァンス 展

草月会館
終了しました

アーティスト

ケリス・ウィン・エヴァンス
タカ・イシイギャラリーは 4 月1 日(土)から29 日(土)まで、東京・赤坂の草月会館1F の石庭「天国」にて、英国人現代美術作家ケリス・ウィン・エヴァンスの個展を開催いたします。2018 年に同会場にて開催された個展の第二章と位置づけられる本展では、床面から天井に達する光の柱作品に加え、クリスタルガラス製のフルートが自動演奏される立体作品と、マルセル・プルーストの『失われた時を求めて』の日本語訳の一部を基にした大型ネオン作品を展示いたします。

我々の社会には物語や概念を他者に伝達する様々な手段が存在します。それらの中で特にエヴァンスが関心を寄せるのは、文学、映画、美術、天文、物理など幅広い分野における先人達の先駆的な試みです。具象を徹底して排することで物語の情景の生成を観客に委ねる「能」や、人間が外界を認識する方法を問う現象学、自然界に存在する全ての物質の最小構成要素を探る素粒子物理学などが挙げられるでしょう。

エヴァンスはこれらの情報伝達手段を、テキストや記号、イメージ、光、音などを運ぶ器と捉えています。そして和歌における「本歌取り」のように、これらのコンテンツを別の器に移し替えることで、元の器では現れなかった美しさを召喚し、作品の背後にあるコンセプトを重層化させていきます。共感覚経験のように視覚、空間感覚、聴覚の垣根を越えて知覚されるエヴァンスの作品は、社会の慣習や教育という鋳型により形成された世界の輪郭から、深い知性と諧謔によって我々を解放します。

本展覧会では、イサム・ノグチ作の石庭「天国」に光の柱作品と松の木が配されます。ゆっくりと明滅を繰り返す光の柱は、石庭のタンブル(音色)を浮かび上がらせるテンポを生み、また能舞台に倣い石庭の適所に据えられた松の木は、その有機体としての存在から時間の「質感」を喚起します。石庭は作品を展示するための単なる場所ではなく、これらの作品を装置としたある種の舞台へと転換されます。

そしてこの舞台に加わるのが、37 本のクリスタルガラス製のフルートとコンプレッサーで構成される、自動演奏作品「Composition for 37 flutes」(2018 年)です。アルゴリズムに基づき自動でフルートに空気を送る本作品は、まるで静かに呼吸をするように和音、そして不協和音を奏でます。能において囃子方の笛の音は舞台に希有の緊張感をもたらし、能の霊的・神秘的な側面を象徴します。2018 年にヘップワース彫刻賞を受賞した同作品もまた、舞台と化した石庭「天国」における無形の舞台装置として機能するでしょう。

石庭の最上段には、吉川一義氏によるマルセル・プルースト『失われた時を求めて』第四篇「ソドムとゴモラ」(1921/22 年)の日本語訳*を基にした、大型ネオン作品「F=O=U=N=T=A=I=N」(2020 年)が配されます。ある器に収まっている物語を、形状や仕組みの異なる別の器に移し替える翻訳という行為には、器が重ならない余白が生じることが多々あります。この余白の中に原文にはない工夫を加えることで妙訳が生まれます。吉川氏がフランス語から日本語に翻訳したプルーストの傑作を、エヴァンスは更にネオンという発光物質に翻訳します。一部を門のように開いて解放し、鑑賞者を招き入れる物語の壁は、ひとたび電源を落とせば情報が質量を伴わないように一瞬で消え去ります。
* 出典:プルースト作/吉川一義訳『失われた時を求めて 8』(岩波文庫、2015 刊)pp. 136–138

会場: 1F 草月プラザ 石庭「天国」

スケジュール

2023年4月1日(土)〜2023年4月29日(土)

開館情報

時間
10:0017:00
休館日
日曜日
入場料無料
展覧会URLhttps://www.takaishiigallery.com/jp/archives/28684/
会場草月会館
http://www.sogetsu.or.jp/index.html
住所〒107-8505 東京都港区赤坂7-2-21
アクセス東京メトロ銀座線・半蔵門・都営大江戸線青山一丁目駅4番出口より徒歩5分
電話番号03-3408-1129
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