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「滅亡を体験する—戦渦と文学」

​日本近代文学館
終了しました
日本の第二次世界大戦が敗戦で終ったのは1945年だった。80年前のことである。あの戦争を実体験として知る日本人は少なくなった。しかし苛酷だったあの戦争を日本人は忘れてはならない。民族の記憶としてこれから何代にもわたって維持するべきであろう。民族の記憶というのは、事実を知って歴史的時間との聯関に身をおくことである。

本展に展示した資料は、それぞれに時代を反映している。時代とは、自然科学的な周期ではなく、歴史的時間がそれ自身の内容によって刻まれたのが「時代」である。あの愚かな戦争をどの資料がどのように時代を反映させたか。それを現在検討することによって私たちの今を歴史的時間につなぐことになる。

日本全土に対するアメリカ軍の空襲が始まったのは1944年11月だった。以降猛烈な爆撃による破壊は殆どの都市を焼き払い、広島長崎に投下された原爆の後も続いた。45年3月の米軍上陸から始まった沖縄の地上戦は島民を巻き込んで悲惨を極めた。有形無形の日本の富は多くが無残に焼失した。本展のタイトルの「滅亡を体験する」は、覚悟を抱えた空襲下の日本人の姿である。

しかし、空襲を行ったのは日本の方が早かった。37年7月に始まった日中戦争のさなかの38年末、日本軍は当時の首都重慶を数ヶ月にわたって空襲した。あの戦争は、日本がアジアで行ったものでもあった。近来十五年戦争と呼ばれるのは、中国東北部への日本の植民地化の野望である31年の満洲事変からの年数である。中国大陸での戦線が膠着したこともあり、40年に東南アジアへの進出――南進論を決め更に戦争は拡大し、最後の破局に向う。日本の第二次世界大戦はアメリカだけが相手なのではなかった。アジアを戦場にしアジアと戦ったのである。帝国主義国家の植民地分割戦争を日本は先頭になっておしすすめた。

本展は、戦争と日本人というテーマを、二・二六事件を契機として戦争を用意し日中戦争をすすめながら日米開戦となり日本全土を焦土にしてようやく敗戦で終局とし、しかしまた50年からの朝鮮戦争に日本は加担していく。戦争が始まり終りまた始まる、本展が二・二六事件から朝鮮戦争の開始までとした所以である。
なお、十五年戦争の日本人犠牲者は、戦死または戦病死した軍人・軍属約230万名、外地で死亡した民間人約30万名、内地の戦災死亡者約50万名、合計約310万名に達した。これに対し、中国の犠牲者は軍人の死傷者約400万名、民間人の死傷者約2000万名にのぼり、フィリピンでは軍民約10数万名が死亡したと言われているが、その他の地域の犠牲者数は不明である(『世界大百科事典』平凡社)。 

スケジュール

2025年9月13日(土)〜2025年11月22日(土)

開館情報

時間
9:3016:30
休館日
日曜日、月曜日
祝日は開館
9月16日・25日、10月14日・23日、11月4日は休館
入場料一般 300円、高校生・中学生 100円
展覧会URLhttps://www.bungakukan.or.jp/cat-exhibition/cat-exh_current/16001/
会場​日本近代文学館
https://www.bungakukan.or.jp/
住所​〒153-0041 東京都目黒区駒場4-3-55
アクセス京王井の頭線駒場東大前駅西口より徒歩7分
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