この度MARGINでは、エリック・ステファンスキー(Eric Stefanski)のソロエキシビジョン「I Want to Exist」を開催いたします。エリック・ステファンスキーは1987年、米イリノイ州シカゴ生まれ。シカゴ美術館付属美術学校で学び、タフツ大学美術館付属美術学校で修士号を取得した後、現在はシカゴのスタジオを拠点に画家として活動しています。 彼の作品においては、テキストが印象的で重要な役割を果たしています。その多くは臆面もない感情を発散させるような強烈で忘れがたい言葉が選ばれており、これらのテキストを通じて詩的で自虐的な内省や、文化批評、過去への執着や大袈裟なロマンティシズムを表現するステファンスキーは、辛辣なユーモアセンスを巧みに挿入し、愛と結婚、政治とカルチャー、そして自身の制作活動そのものに対するフラストレーションすらも作品のモチーフとして利用しています。テキストに用いる言語はあくまで母国語の英語でありながら、作品のトーンや繰り返されるテーマは普遍的な内容となっています。また、一見素早く直感的に塗られた絵の具と手書きのテキストは、図と地のバランスと色彩の調和が慎重にコントロールされていて、直感に訴えかけるデザイン性も兼ね備えています。 その簡潔さと断片性において力を発揮するテキストベースのアートの系譜の中でもステファンスキーは、「日付絵画(Todayシリーズ)」で知られる日本におけるコンセプチュアルアーティストの第一人者、河原温に多大な影響を受けたといいます。河原作品の形式的な側面だけでなく、“時間を記録するために制作物を残していく“というプロセスそのものも、日々のスタジオでの制作物をソーシャルメディア上で毎日公開していくという極めて現代的な方法でオマージュされています。本展の展示タイトルである「I Want to Exist(私は存在したい)」は、彼自身の作品に対する姿勢を端的に表した言葉です。ステファンスキーは日々のスタジオ制作という身体性を伴った肉体労働を通じて自身の実在を確認し、その具体的な成果物として、本来質量を持たない自分の中にあった言葉や喜怒哀楽の感情の存在を浮き彫りにします。「I Want to Exist」はアーティストの言葉であると同時に、作品が彼自身に語りかける言葉でもあるのです。 日本での初個展となる本展では、2022年に制作された平面作品12点を発表いたします。ステファンスキーの無防備で誠実な作品の数々をどうぞお楽しみください。
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