東京オペラシティ アートギャラリー今展では、寺田コレクションの中から、彫刻家が手がけた素描や版画といった平面作品を紹介する。にくづけする(塑像)、あるいは削る(彫像)といった作業を通して空間に形を生み出す彫刻家にとって、平面作品はどのような意味を持っているのだろうか。
三次元の対象を二次元のイメージとして捉える画家に対して、彫刻家は三次元を三次元のかたまりのままで捉えようとする。その視線は、対象と距離をとり、一点透視図法的に眺めてその形態を把握するのではなく、物体の量感をたしかめながら触覚性を伴って対象を把握しようとするものだといえる。佐藤忠良は舟越保武との対談の中で「最も素朴な意味で彫刻が絵と違うところは、彫刻が質抵抗の触覚の芸術だということだと思うんだ。自分の思いを石とか木、土に託して彫ったり刻んだりするんだから、まさに触覚の芸術だよね」[*1]と語っている。このような彫刻家のまなざしは、平面作品においても独自の魅力を放っている。
彫刻家の素描・版画は、彫刻作品の副次的な産物としてだけではなく、一つの完成された表現世界を確立しているといえる。彫刻家が、対象を把握し、自身のイメージを定着させようと描く素描には、作家の意図や制作プロセス、モデルの内面性や心情を掴み取るための試行錯誤や、純粋なフォルムへの関心が表れている。あるいは、対象と空間との関係性や形態に対する作家の思考の痕跡としてのコンセプト・ドローイングの役割を果たしている場合もあるだろう。彫刻家が紙の上に展開する線や形、その造形的な魅力を楽しんでいただきたい。
[*1]佐藤忠良、舟越保武『対談 彫刻家の眼』講談社、1983年、p.96
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