タカ・イシイギャラリー前橋タカ・イシイギャラリー 前橋は、2月21日(土)から3月29日(日)まで、長沢楓の個展「残丘」を開催いたします。昨年3月に同会場で開催された2人展に参加後、当ギャラリーで初めての個展となる本展では、新作のペインティング作品約10点と、今回新たな試みとなるセラミックタイル作品8点を発表いたします。
京都にある自身のスタジオ近くで開催される蚤の市に足繁く通う長沢は、民藝品に描かれるモチーフを参照する絵画作品を制作してきました。異なる時代に生み出されてきた手仕事が混交する中で長沢の目に留まるのは、多様な姿で描かれる動植物の図像のほか、模様や書など記号的あるいは抽象的な形態にも及びます。無名の職人たちの手による他にはない特質や、偶発的に生まれたわずかな差異が個々の品にも見てとれるそれらのイメージは、長い歴史の中で少しずつ形を変えつつ、周りの環境が大きく変わりながらも生きながらえ、現代に至るまで私たちの生活に溶け込んできたものです。今回出展される作品に通底するモチーフとしては、古代のメソポタミアやエジプトに起源を発し中国から日本へと伝来した唐草模様が取り入れられています。世界各地に伝播し要素が削ぎ落とされ記号化していく唐草の形態に魅力を感じると語る長沢の作品においても、蔓が這うように画面上を占め、抽象的形態としての線描との間で宙吊りの状態が作り出されています。
民藝が含有する諸要素に向き合う過程で得たものは、単にモチーフを引用して複数の時間軸を画面に並置させることだけに留まらず、絵画制作のプロセスへと内在化させています。筆を進めながら画面と向き合い対話する過程をより深める意識は、地と図の関係性を捉え直す姿勢にも顕著に現れています。長沢のこれまでの作品の特徴として木版を使用した独特のテクスチャーをもつ色面や支持体の綿布を生かした余白の使い方が挙げられますが、新作では少量の絵の具を用いてスケールの小さなストロークを重ね、そこから大きな画面を構成していく方法が新たに採られています。都度混色を行うことで生まれうる色彩のわずかな差異は、滲みや掠れとともに、作家の身振りから零れるように生まれる「ずれ」としてキャンバス上に表出します。ペインティングとあわせて本展に展示される小型のセラミックタイル作品は韓国で採取された土を素地として使用しており、古代から行われてきた同地との交流の歴史を示唆、再演しています。
眼前に漂流物のように現れるイメージとの巡り合わせを重ね、それぞれに織り込まれた大きな時間の流れと接続することで、長沢は「いま、ここ」としての視覚表現を探求しています。それは一つの定点を指し示しつつも定型化されず、常にアップデートを行いながら有機的に変容する可能性をはらんだ試みといえるでしょう。ときに生命力と結びつけられ普遍的に繰り返し描かれてきた唐草模様のように、長沢の作品は人々の内奥にある根源的な風景をほのめかしています。
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