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大槻英世 「Trace & Fix」
© Hideyo Ohtsuki, Courtesy of TATSURO KISHIMOTO
大槻英世 「Trace & Fix」
TATSURO KISHIMOTO
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12月27日終了
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アーティスト
大槻英世
画家のピート・モンドリアンは、紙テープをいくつもキャンバスに実際に貼りつけることでさまざまな構成を実験する習作を制作したことがある(《ニューヨークシティⅠ》(1941))。それを元に完成させた最終的な作品(《ニューヨークシティ》(1942))では、紙テープは絵の具で描かれたカラフルなストライプによって置き換えられ、紙テープが持っていた物理的な厚みといった物質性は消失することとなった。それに対して大槻英世の絵画は、マスキングテープを絵の具の塗りで擬態することによって、テープの厚みや剥がれ具合、質感といった物質性を実物さながらに再現しており、その点においてモンドリアンとは正反対の方向性を示していると言えるだろう。
ほぼマスキングテープと化した絵の具はキャンバスに描かれているというよりも、まさにテープと同様にその上に物質的に貼りついているという感覚を与える。さらにそこでは、テープ同士の重なり合いやテープの半透明感も正確に再現されている。それと同時に、大槻の作品は、とりわけ少し離れて見るならば、抽象的なモチーフを描いた抽象画であるようにも見える。たとえば本展出品作である《Retrace》は、他の大槻作品と同じく絵の具によってマスキングテープを物質的に模しているのに加えて、電線を具象的なモチーフとして描いたものでもあり、一方、距離を取って見るならばそれは抽象画として鑑賞されうるだろう。大槻作品の最も大きな特徴とは、作品を見ていくなかで、そうした抽象性と物質性・具象性とがくるくると反転していくような鑑賞体験にあるのだ。
他にもそれに類する両義性が存在する。そもそもマスキングテープというツールは制作の過程において用いられるものであり、モンドリアンの紙テープと同様、通常完成作品においては取り去られそのまま残されることはない。したがって、それは完成作品の手前、もしくは外部に位置する存在と言えるだろう。大槻は、そのような役割を果たすツールを絵画の中に描くことで、絵画の内部と外部、制作プロセスと完成といった相対立する要素を接続し、絶え間なく反転させていくのである。
大槻の作品は、マスキングテープを絵の具によって精密に再現した超絶技巧とみなされる場合もあれば、抽象的で形式主義的な絵画として理解される場合もあるだろう。しかし、大槻において重要なのはそのどちらか一方ではなく、その両者、すなわち物質性・写実性と抽象性とが両立しているということなのである。本展は、そうした豊かな鑑賞体験を味わえる貴重な機会となるにちがいない。
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スケジュール
開催中
2025年11月29日(土)〜2025年12月27日(土)
あと10日
開館情報
時間
12:00 〜 19:00
休館日
日曜日、月曜日、火曜日、祝日
入場料
無料
会場
TATSURO KISHIMOTO
https://www.instagram.com/tatsurokishimoto/
住所
〒135-0007 東京都江東区新大橋2-14-2 1F
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アクセス
都営新宿線・大江戸線森下駅A2出口より徒歩5分、JR総武線両国駅より徒歩15分
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