山口ひかり「copper, enamel, bending」

s+arts

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アーティスト

山口ひかり

s+arts（スプラスアーツ）より、山口ひかり個展「copper, enamel, bending」の開催をお知らせいたします。本展は、作家にとって初となる個展になります。

山口ひかりは、主に銅板と七宝の偶然的な着色反応に着目して制作しています。薄い銅板をキャンバスとし、自然と表れる線や点のドローイングを七宝で描きます。本来、七宝の釉薬は、色の濁りを防ぐために不純物を取り除きますが、彼女はその濁りを魅力として活かし、焼成時に釉薬が乗っていない銅に発生する黒色の酸化膜も作品の強みとして捉え制作しています。これらの偶発的な要素を取り入れながら模様や色味を決め、数回に分けて焼成します。銅板を酸化・還元させることによって得られる自然な色味と七宝による鮮やかな色彩に無限の可能性を感じているという山口の作品は、銅と七宝という存在感のある素材を用いながらも、どことなく愛らしい印象を観る者に与えることでしょう。

幼少期から新体操選手として活躍し、身体表現を行ってきたという山口は、大学で金工に出会い、中でも七宝の色彩に魅了され、それ以降、自身の身体性と感性をもって金属作品を制作しています。初めて触った金属は硬く、山口にとって扱いづらい素材だったと話します。しかし0.3mmの薄い銅板を使うことで、ハンマーなどの道具を使うことなく、素手で造形することができるようになりました。そうしてできた金属製の器状のキャンバスに、無意識に現れる線や点のドローイングを七宝で描いていきます。これらはまるで、子供の頃にした折り紙や、画用紙に描く落書きと変わらない、彼女にとって自由なものでした。

ありふれた情報や数え切れないほどの人工建造物の中で生きる私達は、子供の頃、見るもの全てに感じた驚きと感動、満ち溢れていた好奇心、あらゆるものへの直感力を失いつつあると彼女は考えます。現代の情報社会における、様々な技術の向上により暮らしが豊かになる一方で、鈍っていく我々の本来の感覚や直感力の大切さに気付くきっかけとなる作品を目指しているのです。

自身の感覚に素直に導かれ制作された彼女の作品は、立体や平面問わず様々な形をしていて、釉薬で描かれる七宝の色彩は楽しげでありながらも凛とした印象で作品の存在感を際立てています。本展では、立体や壁掛け作品、マグネットシリーズ「PETA PETA-family」に加え、新作の半立体の壁面作品も発表いたします。これを機に山口ひかりの作品群を是非お楽しみください。

スケジュール

2025年2月28日(金)〜2025年3月15日(土)