IG Photo Galleryでは2026年2月10日(火)より、小松浩子展「corrosion」を開催いたします。2019年の「生体価格保証」、2022年の「Channeled Drawing」に続く、IG Photo Galleryでの3度目の小松浩子展となります。 小松浩子は、銀塩モノクロ写真、映像などを複合的に組み合わせて空間を埋め尽くす圧倒的なインスタレーションで、国内外から高い評価を受け、その後もフロッタージュをネガとして制作した写真作品、ハンドメイドの写真集、ZINE、映像作品など多岐にわたる作品を制作している作家です。2018年には第43回木村伊兵衛写真賞を受賞し、2022年にはIG Photo Galleryでの展示と同名写真集により第33回「写真の会」賞を受賞しています。海外ではニューヨークのアートスペースdieFirmaや、マサチューセッツ州のデイヴィス美術館での個展、イタリアMAST財団への作品収蔵、日本の女性写真家の代表作家を集めた展覧会「I'm So Happy You Are Here: Japanese Women Photographers from the 1950s to Now」に選ばれています。 今回の展示の核となるのは、2021年に制作された同名のハンドメイド写真集から発展した作品群です。 展示は写真と映像で構成されます。 写真作品は自身で撮影・現像した銀塩プリントをスキャンしてデジタルデータ化し、それをA3のトレーシングペーパーに出力。2つのイメージを重ね合わせて銀塩印画紙に密着焼き(コンタクトプリント)するという手順を踏んでいます。デジタルとアナログの境界を越境し、異なるメディアを交差させる新たな試みであり、現代において写真がデジタルとアナログを共存させているという現実です。このプロセスを経ることで1枚の写真の情報量は間引かれますが、二枚が重ねられることで情報量は増えているとも言えます。私たち鑑賞者に与えられるのは、その増大した情報がイメージから読み取れるのかという問いでもあります。 タイトルの「corrosion」とは、化学的・物理的なプロセスによる腐食や溶解のこと。フィルムとデジタルを往還させることでイメージが変質することを腐食と重ねていると解釈できますが、作家の意図はその解釈に留まりません。 小松はステートメントにおいて、ダイヤモンドの硬度と化学的安定性の対比や、酸化による細胞へのダメージを例に引き、さらにはテクノロジーの発展に伴い「人間であることをやめる」ことでしか適応できない現代の不条理性について言及しています。 環境の変化によって構造を維持できなくなる「浸食(Erosion)」と「腐食(Corrosion)」が混ざり合う現象は、現代社会における人間とテクノロジーの危うい関係性を暗示しているのかもしれません。 会場では写真作品に加え、8mmフィルムを用いた映像作品も上映されます。同一箇所で2回撮影を行う二重露光の手法で制作されたこの映像は、写真作品とも響き合い、鑑賞者をトートロジカルな知覚体験へと誘うことでしょう。 情報の集積によって空間を異化させることから、一枚の写真の情報量を飽和させ、なおかつネガ像という写真特有の表現を現出させる方法へ。小松浩子が提示する、新たな作品世界をぜひご覧下さい。 なお、展覧会開催の一週目の土曜18時より、オンラインでのトークセッションが予定されています。
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