亀戸アートセンターこの度、亀戸アートセンターでは、田中ヒサミ個展「FEEDBACK」を開催いたします。
田中ヒサミはこれまで、「能動」と「受動」、またトートロジー(同語反復)の概念を手がかりに、絵画における行為と現象、作家の意志と画面からの反応の関係を探ってきました。亀戸アートセンターでは4度目の個展となる本展では、これまで一貫していた考え方を引き継ぎながらも、「能動」と「受動」の関係に新たな変化が見られます。田中は今回、作品を作ろうとすること自体がすでに能動的な行為であるならば、制作の中ではむしろ「受動」だけで進められないかと考えました。支持体のサイズ、配置される形、素材同士の関係、制作途中に起こる偶然や失敗。そうした条件に応答しながら、作品は少しずつ成り立っていきます。本展で発表される作品には、四角形や線、木片、絵具を固めたパーツ、絵具の厚みや擦れ、貼り直された跡などが現れます。それらは、あらかじめ決められたイメージを説明するための要素ではなく、画面の中で起こった出来事の痕跡として配置されています。それぞれの行為は、支持体や素材との関係から導かれた必然でありながら、同時に作家の判断や衝動も含んでいます。
制作を進める中で、田中はそこにどうしても入り込んでくる「ナイーブさ」に気づきます。ここでいうナイーブさとは、ルールや構造だけでは処理しきれない、作家自身の内側から思わずこぼれ出てしまうような、誤解を恐れずに言うならば神秘主義的な範疇のものです。予定不調和な有機的な線を引くこと、表出的な筆触やストロークなどをあえて残すこと。これまでなら抑制していたかもしれない行為を、田中は今回、画面に残しています。タイトルの「FEEDBACK」には、そうしたナイーブさと必然性のような相反する要素の循環的な相互作用の意味が込められています。また、エレキギターとアンプの間で音が循環することによって発生する音響効果としての〈フィードバック〉も連想させるこのタイトルは、かつて音楽活動をしていた田中が感じた、制御と崩壊の止揚の上に成り立つような眩惑的とも言える音響効果である〈フィードバック〉との重層的な意味を宿しています。受動的なルールと能動的な衝動、抑制とナイーブさ、必然と逸脱。それらをどちらか一方に整理するのではなく、同時に存在する状態のまま画面に残すこと。そこに、本展における田中ヒサミの新たな絵画のあり方が表出しています。
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