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イザベラ・デュクロ 「響き合わぬ」

廣誠院
終了しました

アーティスト

イザベラ・デュクロ
京都の廣誠院においてアーティスト兼作家のイザベラ・デュクロ展を開催します。《美しき大地/Bella Terra》シリーズと《響きぬ/Incongruous》シリーズの制作は現在も続けられていますが、彼女の作品が日本で紹介されるのは1990年以来初めてです。希少な紙を使って創作されたこれら2つの対照的な作品群は、作品を包み込む廣誠院の独特な雰囲気と対話し、デュクロが愛して止まない模様(パターン)とその連続性が素材を通して織りなされ、彼女の哲学を表現しています。デュクロは、シンプルなものから複雑なものまであらゆる形態を用いてテキスタイルの可能性を限りなく広げることにキャリアを捧げてきました。それぞれのデザインが叙情的なモチーフや瞑想を感じさせるリズミカルな祈りとなり、廣誠院の神聖な静けさの中でより強く心に語りかけます。

5年間にわたり制作された《美しき大地/Bella Terra》シリーズでは、シンプルさの中に限りなく見出される未知の可能性が表現されています。「Beautiful Land」と英訳されるこのシリーズは、紙に何度も同じ風景を描くことにより、のどかな手つかずの場所が時とともに変容してゆく印象を与えます。風に吹きつけられ続けて傾斜してしまった木、丘陵と隣接する水の流れ、三日月の光、全ての作品にこの3つの原始的要素が取り込まれています。決して同じ姿にとどまることのない風景を献身的に記録し続けるデュクロの作品は、まるで季節の移り変わりを一切見逃すまいとしているかのようであり、また時の流れを一時たりとも取りこぼさずに捉えようとしているかのようです。繰り返す行為は、人生のリズムを象徴しているだけでなく、芸術的解釈を表現するための基本的手法の一つである、という彼女の信念が具現化されている作品です。今回の展覧会では、昼と夜、陸と空、天と地といった自然の二面性を思い起こさせるように、平和な風景が描かれた作品を二つ一組にして展示しました。要素はそれぞれ独立しており、それぞれに献身する価値があると考えるデュクロにとって、《美しき大地/Bella Terra》シリーズは「各要素が支配する広大な風景としての統合体、その細胞(中略)古代哲学により確立された四つの要素が秩序をもたらした状態」 なのです。《美しき大地/Bella Terra》シリーズの制作が進むにつれて作品は主題から離れて行くように見受けられるのは、彼女の作品が何度も訪れる未知の風景という枠を次第に超えて、古来よりアートで取り扱われてきた原始的要素の本質的な美に向かっていくからです。作品の規模、構成、素材そのものが、それぞれ独立し、作品の主題となっているのです。

《美しき大地/Bella Terra》シリーズはシンクロニシティ、つまり静かな調和や自然の秩序によって特徴付けられますが、《響きぬ/Incongruous》シリーズは、フォルムの違いと微妙な不調和によって特徴付けられます。上階の作品は、溢れるほどの花が生けられた花瓶、湯気の立つティーポット、模様のあるテーブルトップなど、家庭空間の象徴として選ばれた特定のシグニファイアに焦点が置かれています。最近出版された自著『Recent Animals』の中で、デュクロは、紙とテキスタイルに対して彼女が絶えず抱いてきた敬意、主なインスピレーションの源としての紙とテキスタイルの役割、また装飾的使用という枠を超えた模様(パターン)への傾倒について考察しています。それに加えて、まず彼女が最初に魅了されたのが素材そのものであったこと、また作品で市松模様の布を使うのは「布/物体が『美』の概念に可能な限り近い本来の意味合いを取り戻すことができるように、例えば身体の保護といった日常生活上与えられている意味合いを超越しようと試みているから」と述べています。オープンで自由な構図の中に、落ち着いたインテリアを象徴する要素を繰り返し描くことで、デュクロはその美しいフォルムの鑑賞の幅を広げようとしているのです。布地を織りなす糸を「建物を支える横梁としてとらえ、それらの交差点に居心地の良い空間を同時に作り出す」ことにより、「満ち溢れた感覚」と「虚しい感覚」を行き来する不調和な緊張感を彼女自身が各作品の中で巧みに操っているのです。意図的に残された空白(void)は、デュクロが和紙の上で丁寧に組み合わせる素材(顔料、墨汁、テキスタイル、コラージュ)そのものの純粋な美しさを強調するために必要不可欠な部分であり、また周囲の余白は素材で埋められている部分と同等あるいはそれ以上に重要な役割を果たしています。デュクロの作品から、すべての布切れには視覚および触覚を介してもたらされる感覚的体験を超越した非物質的な霊が宿っているという彼女の揺るぎない信念が伝わってきます。「どのような古い錦織りのぼろ布であっても、なくてはならない僅かな『空間』が織り込まれている。機織り音がカタンと鳴るたびに、織り手は何かを捕らえ、それを布に閉じ込めてゆく。繊維と繊維の間の隙間に息吹を織り込み、織りあがった布地に命を吹き込む。(中略)もし布の声を聴くことができるとしたら、すべての布たちは自分だけの壮大なストーリーを語ってくれることだろう。

デュクロの作品の中心には深い思想があります。シンプルで洗練された人生のリズムの繰り返しの中に美しさを見出すアーティストの哲学は、彼女の執筆活動だけではなく創作活動にも反映されています。この展覧会〈響き合わぬ/Incongruous〉でデュクロの思いを体で感じて頂けることを願っております。

スケジュール

2025年11月11日(火)〜2025年12月2日(火)

開館情報

時間
11:0017:00
休館日
月曜日
入場料無料
会場廣誠院
https://kouseiin.org/
住所〒604-0924 京都府京都市中京区一之船入町538-1
アクセス地下鉄東西線京都市役所駅2番出口より徒歩3分、京阪線三条駅12番出口より徒歩5分
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ねづ

床の水平がグラグラで、お寺としてもう休業されているそうだけど、借景の庭園もきれいだし、なかなかない鑑賞体験でした! 作品も茶室にあったり。

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