20年以上の歳月にわたる本展「In Search of Lost Paradise」は、命を脅かす大病を患った幼少期から大人へと成長していく、ジュリアの姪・エリザの姿を追ったものです。親密なポートレートと自然界を織り交ぜることで、本シリーズは彼女自身の現実を超えた「パラレルワールド(並行世界)」を創り出します。それは、幼少期の記憶をそっと再構築し、生きることの美しさに目を開かせるための空間です。病を記録するのではなく、写真はその表層の奥へと手を伸ばします。自然はエリザの強さと幸福の源となり、彼女の内面世界が静かに花開くための土台となります。「悲しみは精神の力を発達させる」というプルーストの言葉は、彼女の物語に深く響き渡っています。彼女の病は単なる傷ではなく、覚醒への触媒でした。そして二人が共に築き上げたパラレルワールドは、決して現実逃避ではなく、内側からの癒やしを物語る静かな証(あかし)なのです。精神分析医アリス・ミラーの「幼少期の強烈な感情の世界を恐れる必要がなくなったとき、私たちは真の自己へとアクセスできるようになる」という思想にインスピレーションを得た本作は、幼少期の記憶を、現実と想像の狭間にある比喩的な空間へと昇華させています。光の移ろい、身振り、静寂の瞬間。そのひとつひとつが引き金となり、エリザの内面世界が静かに現れていきます。「In Search of Lost Paradise」は、目に見えるものと見えないものの狭間にある空間を静かに見つめ、その中に息づく、不屈の精神がもたらす生命の美しさを祝福する──そんな、視覚で描かれた一編の詩であり、鑑賞者への誘いです。
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