YUKIKOMIZUTANIこの度YUKIKOMIZUTANIでは2025年2月8日(土)から2025年3月1日(土)まで、林樹里、坪本知恵による「うつろの疏水をながめたとき」を開催いたします。
林樹里は「おのずから現れるもの」、「うつろうもの」をテーマに制作を行っています。江戸時代の琳派の作品に見られる「にじみ」や「たらしこみ」の技法研究を起点に、「自然(じねん)」の思想に関心を寄せ、「みずから」が描く行為と、画材が「おのずから」生む現象の間を往来し、自然と対話するように制作しています。近年は文人文化にも着想を得た「noise(さわり)」シリーズに取り組み、自然や異国に身を置いたときに、その地の空気が自身の内側で新たな音となって響く感覚を捉え描きます。微細な変化を拾い上げることで、全てを明らかにしようとするのではなく、さりげなく気づく感覚をもたらす表現を模索しています。
坪本知恵は「言葉の保存」と「伝達」をテーマに、地元愛媛県にある安藤正楽による日露戦役記念碑、通称「顔のない碑」からインスピレーションを受けた作品を制作しています。その石碑にはかつて、戦争反対を明文した世界平和を切に願う文章が記されていましたが、検閲により全文が削られ、今は岩肌だけの石碑がただ立っています。「Inscription」シリーズでは、その削られた文章をステンシルによって画面上に読めない形で構成し直すことで、欠損や存在の有と無のグラデーションについて問い続けます。
両作家の制作の共通点として、自と他、過去と未来、人工物と自然といった対極するもののはざまを行き来するという過程があります。本展では、この行き来する手段や様を水を導く疏水(そすい)に見立てました。疏水とは、通水させるために土地を切り開いて造られた水路のことを指します。疏水自体は人工的に作られるものですが、そこには自然の水が流れ込みます。二人にとって作品制作は疏水を造る行為のようであり、そこに流れてくる水をぼんやりと眺めることを作品制作に向き合う姿勢と重ね、本展のタイトルとしました。
まだコメントはありません