生涯をかけて自由を追い求めた望月桂(1886-1975)は、日本の現代アートの源流にいる人物の1人です。
現在の長野県安曇野市明科に生まれた望月は、東京美術学校に進み、荻原守衛(碌山)らに影響を受けました。卒業後は普通の画家にならず、大正時代の東京で一膳飯屋「へちま」をひらきます。そこは誰もがアーティストになれる場でした。望月は斬新な未来派の技法で挑発的な絵を描き、「黒耀会」を組織して過激なアンデパンダン展を開催。美術のみならず演劇や音楽なども展開しました。その鮮烈な軌跡は、アートの歴史を書き換え、近代の文学史や社会運動史にも今までにない視覚的イメージを与えるものです。戦後は郷里で農地改革や女子校の美術教育に携わり、また新たな自由を追求しました。もっとも、画壇の中心から外れたところにいたため、長らく美術史では知られないままでした。
本展は、2025年に原爆の図丸木美術館(埼玉県)で開催された同名展覧会の凱旋となります。近年ご遺族から安曇野市に寄託いただいた絵画と文書を中心に約140点を紹介します。思想弾圧、そして戦争。先の見えない時代を痛快に生き抜こうと奮闘した望月と仲間たちの精神は、驚きをもって、現代の私たちを取り巻く世界にも風穴を開けてくれるはずです。
まだコメントはありません