福岡市美術館藤野一友(1928-1980)は1950年代より二科会を中心に活動した、細密な描写による幻想絵画を特徴とする画家です。神話や西洋古典絵画、シュルレアリスムを下敷きに編まれた世界は、絵画のみならず舞台の演出・美術、詩や小説の執筆、装丁、挿画、映画とジャンル横断的に幅広く展開しました。1965年に病に倒れ、1980年に早逝しますが、没後も作品がSF小説の表紙を飾るなど、現在までインパクトを与え続けています。
同じく1928年生まれの岡上淑子は、コラージュ作品で知られる美術家です。1950年から1956年までという短い期間に、進駐軍が残した洋雑誌の写真からイメージを切り取り、紡ぎ出された夢見るような世界は、発表当時から注目を集めました。2000年に再び光が当たり、近年では高知県立美術館や東京都庭園美術館でも個展が開かれています。
1951年頃に文化学院で出会った藤野と岡上は1957年に結婚。「作風がどことなく似てましたでしょ」と後年岡上が語っているとおり、両者の作品はシュルレアリスムの影響や受容の中で考察できるものです。また、メインモチーフが女性の身体であることも双方の作品の特徴といえるでしょう。その身体は時に断片化し、時に異形なものに変容しますが、藤野作品では家父長的な戦後日本社会における男性優位のまなざしを、岡上作品では戦後の日本で女性が抱いた夢と苦悩を読み取ることも可能です。
福岡市美術館は1982年に藤野一友展を開催し、代表作を含む作品・資料を多数所蔵しています。40年ぶりとなる回顧展は岡上淑子との2人展として行います。時代順に作品を紹介する2つの個展形式で構成することで、ふたりの表現の特徴、共通点と差異が鮮やかに浮かびあがります。また、その活動を醸成し共鳴した時代も見えてくることでしょう。
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