水戸芸術館 現代美術ギャラリー竹村 京は、時間の流れや人・物の移動、天変地異、偶然の出来事など、さまざまな要因によって揺らぐ世界のなかで、「縫う」という行為によって対象に新たな光を与える作品を制作してきました。友人の幸せな生活を等身大で写し取り、その一部を縫い留めることで地震にも負けない保管のかたちを模索した初期作品《A.N.のリビングルーム、地震の予感》(2005年)をはじめ、写真やドローイングに布を重ねて刺繍する平面作品や、壊れた日用品を布で包み失われた部分に沿って独自の「修復」を行う立体作品、緻密な運針のなかに時間の流れや世界との交感を表した「Time counter」など、その関心は一貫して、個人の記憶や出来事を作品のなかに「仮留め」し、一つひとつの存在を現在から未来へとつなぐことへと向けられています。
竹村にとって過去最大規模の個展となる本展では、2000年代の代表作を起点に、「修復」を施した作品群や、「天災」と「修復」を主題とした新作インスタレーション、水戸の街なかで参加者が「修復」の意味を考え、実践するワークショップなど、その多彩な創作から、記憶と喪失、時間や行為における不可逆性といったテーマへと迫ります。
今日の世界は、価値や真偽が容易に反転し、現実との向き合い方に戸惑うほど不安定な状況にあります。世界を支えるのは変転か普遍か、過去・現在・未来の変遷のなかで、わたしたちは何を引き受け、何を受け渡していくのか。本展は、揺らぐ世界への応答を続ける竹村の作品を通して、出来事やその記憶との向き合い方について、ともに考える機会となるでしょう。
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