このたびphotographers’ gallery では企画展として、ニューヨークと横浜を拠点に活動する美術家・宮森敬子による個展「No matter what, I am still a part of it. (それでも、私は世界の一部としてある)」を開催いたします。 宮森は、極薄の手漉き和紙に樹木の表面を写し取る樹拓(フロッタージュ)を用いて、時間や記憶の痕跡といった目に見えない現象を静かに可視化する表現を続けてきました。日本とアメリカという二つの国に生き、両国にまたがる家族の複雑な層を抱えながらも、彼女は「生きること」と「制作すること」を切り離さず、日々の行為として制作を続けてきました。 本展では、2021年より継続している長期プロジェクト《TIME》と、新作インスタレーション《No matter what, I am still a part of it. 》を発表します。 《TIME》は、宮森が日々採取している樹拓を、小さなガラス箱に封じ続けているプロジェクトです。今回の展示では、1,000 日分の《TIME》として、1,000個のガラス箱が積み上げられることで、時間の堆積が立体的に現れます。また、1 日目から 1,000 日目までのプロジェクト全体を収めた写真も、大きな時間の景観として提示されます。 新作《No matter what, I am still a part of it. 》は、作家自身の30日間をもとに構成されたインスタレーションです。30 枚の樹拓と、それぞれの樹拓から1箇所ずつ切り抜かれた「部分」と、さらにそこから切り抜かれた「部分の部分」とが展示空間に配置されます。来場者は空間に散りばめられた小片を探し出し、複数の層にまたがる静かな対応関係を結ぶことができます。 これら二つの作品は、「時間」と「空間」の概念を塊と散りばめによって見せていることにおいて対照的ですが、ともに断片が全体の一部である点において共通しています。そして、手のひらに乗るほどのこれら小さな断片は、どんな儚い存在も大きなものに繋がり、また影響を与える鍵となり得ることを静かに示唆しています。
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