名和が大学時代に制作したプロトタイプを基にした《Meat in a Cell》(2025)には、有機物と人工素材の相互作用やセル概念など、名和の長年にわたる主題の萌芽を見出すことができます。一見磨き上げられた鉱石にもみえるオブジェは、ガラスケースに詰め込まれた肉塊であり、シュルレアリストの用いた「異化」効果のように、視覚的な認識と実体との乖離によって鑑賞者の記憶に深く刻み込まれます。炭化ケイ素で覆われた木製の椅子と乾燥した植物からなる《Traveller's Tree》(2025)や、解剖標本のように、水分を樹脂に置き換えるプラスティネーション処理を施した鶏頭をガラス瓶に刺した《Cockscomb》など、有機物や生体さえもが凍結した静止状態に置かれ、異質で異次元なイメージをいっそう増幅させていきます。
展示作品の中でも、《Cells in the Grotto》(2025)は解釈の流動性を象徴するうえで際立っています。リゾームに覆われた洞窟のような造形は粘土を乾燥させ粉砕した泥で覆われ、その内部に異なる天然・人工物を封じ込めた大小さまざまなガラス球が置かれています。フレーク状の雲母、結晶化した鉱物、青くフィルムコーティングしたカブの種、ヒマラヤ岩塩やよもぎなど、多種多様な色彩や形状をもつ要素がカプセル化され、地球環境の危機と複雑に絡み合う生態系を暗示しています。同時に、不調和に見えるオブジェの配置は、神話的・象徴的なイメージを想起させ、コントロールできない外的要因に導かれる集合の特性を浮び上がらせています。
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