この度、rin art association は神楽岡久美による個展「フィクションは真顔で語る」を開催いたします。 神楽岡久美はこれまで、社会と身体との接点に目を向け、そこから生まれる新たな“身体像”の探求を続けてきました。 『光を摘む』では、視覚に対する受動的な信頼に疑問を投げかけ、“視る”という行為そのものを意識化することで、世界との関係を問い直しました。続く『美的身体のメタモルフォーゼ 』では、「美を手に入れたい」という普遍的な欲望を起点に、身体と美の関係を多角的に読み解こうとしました。 こうした作品を通じて神楽岡が辿り着いたのは、「私たちが信じてきたリアル(現実)とは何か」「その価値観や常識などの情報は、いかに構築され、私たちに作用しているのか」という根源的な問いです。
本展『フィクションは真顔で語るFiction beyond the Real 』は、フィクション(想像)とリアル(現実)のあいだをめぐる試みです。フィクションとリアルは本来、二項対立ではなく、つねに行き来しながら互いに浸透し合っています。たとえば、古代ギリシアの神殿建築や彫刻、カトリック教会における宗教画、神話や聖書など、アートはかつて「フィクションをリアルに変換する装置」として機能していました。語られた物語は、やがて人々の中にリアルとして根づき、集合的な無意識となり、美意識や価値観の基準を形成します。
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