黒部市美術館キュンチョメ(ホンマエリ、ナブチ)は、制作行為を「新しい祈り」と捉え、様々な社会問題や自然災害、そこに関わる人々と正面から向き合い、複雑に絡まる感情や交錯する意見を反映させながら真摯に作品に昇華させてきました。
2022年以降は、フィリピンやハワイに滞在し現地の圧倒的な自然や、多様な価値観に触れ、思考を大きく更新させています。そして現在、海や大地、あるいは地球そのものに全身全霊で関わりながら「新しい幸福」の在り方を模索しています。
展示作品11点は全て新作で、海で制作された作品を中心に構成されます。作家は近年、様々な方法で海に潜り続けてきました。全身の力を抜き、環境に身を委ね、息を止めて海の深くまで行き、再び海面へ浮上する。そこでようやく、おもいっきり息を吸います。その「呼吸」は生の実感であると共に、世界と出会い直す瞬間であったのかもしれません。そのような数々の自然体験と共につくられた作品は、詩的でユーモラスな行為を通して幸福の探求へとつながっていきます。
また、海辺近くのカフェや、展覧会場の外にも作品が点在しており、美術館内だけでなく黒部の自然に触れながら作品と出会う構成になっています。会期初めの10月から11月にかけての一ヶ月は作家が現地に滞在し、「深呼吸を持ち帰る」ためのワークショップが定期開催されるほか、「記憶のアイスクリーム」(アイスクリームの記憶とアイスクリームを交換する作品)が突発的に開催されます。
本展覧会で提示される「新しい幸福」が、様々な不安や緊張が存在するこの時代を、共にしなやかに生きるための一つの指針となれば幸いです。
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