下北沢アーツでは、川村摩那個展「Truth is stranger than fiction.」を開催いたします。川村摩那は1995年兵庫県生まれ、早稲田大学文学部日本語日本文学コースにて夏目漱石や志賀直哉など日本の近代文学作家の小説内の叙述方法や日本語学を学んだ後、民間企業勤務を経て、京都芸術大学修士課程にて絵画表現を研究し、現在は京都を拠点に絵画作品を制作しています。これまで多くの展覧会やアートフェアへ参加し、昨年は群馬青年ビエンナーレ2025にて大賞を受賞し作品が群馬県立近代美術館に収蔵されるなど、注目の新進作家です。川村は国内外の文学作品や自分で綴った文章などを基に、その情景や文字そのものをモティーフとして制作しています。文字は何かを具体的に伝える手段でありながら、読み手一人一人が違う解釈をし、頭の中で異なる像を産み出します。その揺らぎを文字を書き、滲ませ、その上に何層ものレイヤーを重ねることによって表現しています。川村の作品は具象にも抽象にも見えますが、正に文字が、文章が具象から抽象的なイメージに変わっていく移ろいを描いているからでしょう。また、現代的な絵画でありながら、どこか古風な印象も覚えるのは川村が古代から現代に綿々と遺されて来た文学の世界を自由に行き来しているからではないかと想像させます。本個展では「Truth is stranger than fiction.」「事実は小説より奇なり」と銘打ち、日常生活を送る中で、確かにあったけれど曖昧な出来事をテーマに描いています。小さな、少し不思議なその事件は、初めから朧げで、だからこそ時々思い起こされ、その度変化していくのかもしれません。川村は、誰しもが経験したことがあるであろう、言葉では表現できない、自分だけのその体験をそのままに受け取り、作品にしていきます。本展が、ご覧になる方それぞれの個人的な記憶を呼び起こすような展覧会となれば幸甚です。
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