そうした歴史的および個人的な視点の両方を維持しながら、最新の作品群において作家はさらに表現の幅を広げています。展覧会名と同じタイトルを冠した作品「Shadow of Others」においてブルチーアはルーマニアという国家の歴史的な立ち位置を考察し、周縁性という概念を描き出します。絵画に登場する人物たちは海辺で陽光を浴びて楽しんでいるかのように見えますが、植物や日除けが彼らを部分的に覆い隠し、その姿は風景の中に溶け込んでいます。
こうした捉え難い曖昧さ、移ろいゆく感覚は、ブルチーアの作品の中では珍しく横長の構図を持つ「Hottest Day of Summer」にも漂います。この作品には、白いカモフラージュネットの下で風を浴びながら寛ぐ人々の姿が描かれ、穏やかに連なる情景が広がっています。しかし、その穏やかさの裏には、見えざる変化の力が蠢いています。本作はボブ・ディランの楽曲「The Times They Are A-Changin’」を視覚的に表現したもので、風が時代の変遷を運ぶ象徴として表現されています。「今という時も/やがては過去になる」という歌詞のように、作家はノスタルジーと不確かな未来との間に生じる緊張感を描き出し、この安らぎに満ちた風景の中に終わりと始まりが共存する時の流れを感じさせます。
これらの作品が示すように、膨大な歴史的・文化的引用をもとに作品を構築するブルチーアですが、一方で近年は自身の内面に目を向け、個人的な父親としての経験に基づく作品も生み出しています。「Dreaming in a Dream」では、眠りと覚醒の狭間を漂う作家の息子を描き、夢と寓話、そして現実との境界を曖昧にしています。カラヴァッジョの「トカゲに噛まれた少年」へのささやかなオマージュとして少年はトカゲ柄のピンクの毛布に包まれ、イタリア系アメリカ人デザイナー、ハリー・ベルトイアのサンチェアに座り、1960年代の郵便局のキャビネットやヴェネチアン・マーブルの床に囲まれています。これらの異質な要素が入り混じることで、少年の存在は時間と空間を超越し、ブルチーアが探求する多層的な記憶の概念を強調しています。
ブルチーアにとって絵画は、美術史、文学、映画、音楽、そして旅との絶え間ない出会いを原動力とする日々の実践です。自身の創作空間における終わりなき探求を通して、彼の作品は絵画の無限の可能性を体現し、社会的・政治的な問題と個人的な経験の間を行き来しながら展開されています。ブルチーアにしか生み出せない喚起的かつ重層的な表現で、観る者を歴史、記憶、そしてアイデンティティに対する深い洞察へと誘う本展「Shadow of Others」を、どうぞこの機会にご高覧ください。
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