Gallery COMMONGallery COMMONはイギリス人アーティスト、Matthew Stone(マシュー・ストーン)の日本初個展「Human in the Loop」を2023年5月13日から6月11日まで開催します。
本展では、アナログとデジタルの技法、そしてAIによる画像処理を組み合わせた絵画シリーズの新作に加えて、作家が開発したオリジナルのアルゴリズムによって生成され、LEDディスプレイ上に表示される「再定義された絵画」の作品も発表します。また、東京での初個展を記念した限定版画を発売します。
2000年代初頭、ストーンは友人たちとともに、サウスロンドンのサブカルチャー・ムーブメントに火をつけたアートコレクティブ「!WOWOW!」を結成しました。アンディ・ウォーホルのファクトリーやヨーゼフ・ボイスの「社会彫刻」に魅了されたストーンは、廃墟となったビルで数多くの展示、レジデンス、サロン、大規模なアートフェスティバルなどを開催します。その後、ストーンはミュージシャンのFKA Twigsと出会い、アイコニックな『M3LL155X』や、高い評価を得た『Magdalene』のアルバムジャケットを生み出しました。
ストーンはこれまで、アナログの手法とデジタルレンダリング、そして印刷技法を組み合わせて絵画作品を制作してきました。そして新たにその制作プロセスに「AI」が加わります。本展での展示作品に描かれたイメージは、そのほとんどがAIによる「出力」とアーティストの手による「入力」が組み合わさってできています。
展覧会のタイトル「Human in the Loop」は、AIの開発プロセスの中にあえて人間を介在させ、AIのトレーニングデータの質を高める仕組みのことを表しています。そしてストーンは自らをこの「human in the loop」(ループの中にいる人間)になぞらえ、次のように話します。
「多くの人がAIをツールとして扱うときのクリエイティブレベルを誤解しているように思います。新しいテクノロジーがどのように作られ、誰のために、そして何のために使われるのか、それを疑問を持つのは正しいことです。しかし同時に、抽象的で何もわからない不安な状態からAIをただ操作してみるのではなく、テクノロジーやツールに自分から積極的に関わることも大切なのではないでしょうか」
新しいテクノロジーが現れるときは常にそうであったように、このAIという革新的なテクノロジーもまた、熱狂と恐れの両方を引き起こし、シニカルなものから否定的なものまでさまざまな議論が交わされています。AIの、そしてAIと共に働く私たちのクリエイティブな可能性とは何なのか。ストーンの新作はこうした問いを投げかけてきます。
AIを拒絶するのではなく、むしろAIを用いることによって人間らしさを実現することができる。私たちはそう信じなければならないと話すストーンのテクノロジーに対する楽観的なアプローチは、テクノロジーを人と人との繋がりのために使うことを勧め、そして、真の創造力は道具ではなく、それを使いこなす人の手の側にあるのだと教えてくれるのです。