Piecesは、ドイツを拠点に活動を行うアーティスト、ダニエル・シュテューベンヴォルと日本を拠点に活動を行うジュエリーアーティスト、山越美佳による共同プロジェクトです。本展覧会では、一連のファウンドイメージを取り巻く創造的な対話に基づいた新作のシリーズを展示します。 この展覧会は、いくつかの出会いの成果であると言うことができます。まず、新しい場所との出会い:シュテューベンヴォルが、2022年にTravel Grant Japan, Hessian Cultural Foundationとして東京を訪れたこと。そして、二人のアーティストがそれぞれの物語を解体し、再構築するという実践を組み合わせるという出会いです。 シュテューベンヴォルは東京滞在中に古本屋で雑誌や本を集めました。文字を解読できなかったため、彼は画像だけでコレクションを作りました。展示される3つの画像グループは、1つのシリーズとして見ることもできますが、複合的な要素からなる作品群としても読み解くことができます。アーティストがシリーズの概念を形成し、破壊するという継続的な探究の一環として、一連のイメージグループ、また各イメージが単体で成り立つだけでなく、様々なバリエーションで混ぜ合わせ、シャッフルして組み合わせることで、多様な作品を作り出すことが可能になっています。また、この作品には慎重に配置されたテキストが施され、第二のストーリーテリングのレイヤーを加えています。日常生活の中で書くことを始めた山越美佳は、それまで見落とされていた細かなディテールに注意を払うようになりました。ステューベンヴォルの普通の中に特別なものを見つけるための注意力と同じく、彼女の文章は日常生活に詩的でユーモラスな要素を見出そうとしています。彼女は各単語を注意深く選び、それぞれのフレーズに時間をかけ何度も書くということを行うことで、やがてテキスト自体がイメージに変わっていき、第2のビジュアルサインとして機能するようになったといいます。最終的に選ばれた彼女の手書きのフレーズは、ステューベンヴォルによってキャンバスにトレースされ、二人の手書き文字が組み合わさります。 ユーモアたっぷりのウィンクで、元の出版コンテキストから取り外され、イメージは描写ではなく、彼らの表現へと昇華されます。シリーズa、b、cは、がっしりとしたダイナミズムが示されています。過去の雑誌に掲載された、作者不明の写真家による匿名の男性の動きが捉えられています。この3枚の肖像写真シリーズには、動きと身体についての研究が溶かし込まれています。作品*sceneryは、理想の場所についての表現です。このイメージがどこであるかは重要でなく、見る人それぞれが人生の中で培った憧れの場所として築いた島として存在します。これは、所有できる、売買できる、責任を負わずに訪れることができる商品化された場所であり、余裕のある人のための、憩いの場所です。最後のシリーズ1、2、3、4は、コートとスカーフを纏った男性のポートレートです。プリントの粒子感から、その画像はデジタル前のプリントの再生産であることが示唆されます。青年の目は、メガネの反射で隠れています。4枚のポートレート写真すべてで、彼のポーズはわずかに変化しています。彼は匿名のままですが、テキストのレイヤーによって彼が生き生きと現れるスペースを作り出しています。 ジュエリーアーティストとして知られる山越は、この作品のために小さな銀の釘を制作しました。これらの釘がプリントを固定し、全体がアクリルボックスで覆われます。この小さなカプセルの中には、多様な意味を生み出す要素が含まれています。そして、オブジェクト自身が語り始めるのです。
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