《ロスト・フロンティア/ルートホーム》(2025)スチル

宇治野宗輝 「SWEET HOME C」

ANOMALY
あと2日で開催

アーティスト

宇治野宗輝
ANOMALYでは、2026年4月11日(土)から4月18日(土)まで、6日間限定で宇治野宗輝の近作ビデオスクリーニング「SWEET HOME C」を緊急開催いたします。

宇治野は大量生産された家電やエレキギター、電動工具などを用いて制作したサウンド・スカルプチュアを組み合わせ、インスタレーションや映像作品として発表しています。近年は、自身や家族の物語をモチーフに、個人的な営みの記憶の断片や、日常的な物質や事象を通して、日本の近代化、それに続くポスト・モダンの大量生産・大量消費型モデルへの転換、グローバル化の影響を検証する作品を発表しています。戦争の連鎖が絶え間なく続く現代を背景に、本スクリーニングでは、満洲に生まれ同地で終戦を迎えた宇治野の母の記憶に基づく作品を一挙に紹介します。

ANOMALYでの2023年の宇治野の個展「Lost Frontier」は、コロナ禍で外出自粛を余儀なくされたことを機に、これまで何度も耳にしていた自身の母の満洲での経験を撮影したことで生まれた作品を中心に構成した展覧会でした。多くの人々が開拓民として渡ったフロンティア、満洲での、終戦をむかえ引き揚げるまでの母の個人的な経験は、日本とアメリカ、中国 (満洲)という国家の関係を、相対的に照らすものでした。また、展覧会に向けた一連の作品の制作を通して、宇治野は自身が移民の子孫であるという思いを強く感じるようになったと言います。

同展出品作の《ホーミー&ザ・ローテーターズ(Homy and the Rotators)》(2023)は、宇治野が2000年代初頭から取り組んでいる、20世紀のマスプロダクトをDIYの技術で再構成したサウンド・スカルプチュア(ザ・ローテーターズ)のビートにのって、宇治野の母が生まれ故郷の満洲で最も好きな食事だったいう、餃子の思い出を語る作品です。
この作品を本スクリーニングにあわせて再構成した作品が、《スイート・ホーム・C(SWEET HOME C)》(2026)。母の語りにはかつて過ごした街、安東(現・遼寧省丹東市)の様子が重ねられ、サウンドには、ミニマイズされたアメリカの音楽の構造が反映されています。郷愁を込めて語られる餃子のエピソードに対して、アメリカ文化を享受した戦後の日本に、東京オリンピック開催の年に生まれた宇治野の出自があらわれたサウンドが掛けあわされていると言えるでしょう。

この他、昨年開催された千葉国際芸術祭2025で発表された《ロスト・フロンティア/ルートホーム(Lost Frontier – Route Home)》(2025)およびその原型となった《ロスト・フロンティア》(2023)もあわせて上映します。
《ロスト・フロンティア》も、母の満洲での体験をテーマとした作品ですが、そこにあらわれるのは戦況の変化に伴い翻弄される市井の人々の姿です。作品中には、戦争や開拓に重要な役割を果たし、近代のヘゲモニーの象徴である鉄道が、戦後、アメリカ文化や消費社会が覇権を広げる様に重ねられて登場します。千葉国際芸術祭の舞台となった千葉には、かつて大日本帝国陸軍所属の鉄道連隊を中心とした大規模な軍備施設が置かれていたことから、より鉄道にフォーカスをあて新たに制作された作品が《ロスト・フロンティア/ルートホーム》(2025)です。本作ではアメリカのフィルターを通した第2次大戦の記録が作品の軸(レール)となり、母の引き揚げの道のりをなぞりながら、かつて日本が植民地とした国の人々へ眼差しが向けられています。彼の地での幸福な思い出とともに語られていたのは贖罪の思いだったと、宇治野は今はなき母との日々を振り返ります。作品に挿入された現在の韓国の街の姿や、ブルースを思わせるサウンドには、移民の子孫である宇治野の、隣国の人々への敬意が込められています。

この他、社会が情報化され「モノ」の質量が失われ、物質に対する感性が希薄になった今だからこそ、自らの手で、DIY精神をもってポスト・モダンに対する自分なりの答えを出さなければならないと思いたち、制作をはじめたという「プライウッド・シティ・ストーリーズ(Plywood City Stories)」もあわせて展示いたします。

技術革新が進み新たな時代を迎えた現代の日本は、同時に、戦争を体験した最後の世代を失っていく時期であり、また一挙に開発が進んだ近代のインフラに綻びが出始めている時期でもあります。
日々進化を遂げる世界と歩みをともにする一方で、現在と地続きにある過去を認識し、自らの手でその綻びを修復すること、その両輪がこれから求められていくのではないか、と宇治野は言います。
宇治野の作品は、自らの寄って立つ場所を再認識し、そこから歩を進めるうえで多くの示唆を与えることでしょう。

6日間という非常に短い会期のスクリーニングです。お見逃しのないようぜひご高覧ください。

[関連イベント]
トークイベント
日時: 4月11日 (土) 16:30〜18:00
登壇者: 宇治野宗輝 、涌井智仁(美術家・音楽家)

スケジュール

2026年4月11日(土)〜2026年4月18日(土)

開館情報

時間
12:0018:00
休館日
月曜日、日曜日、祝日

オープニングパーティー 2026年4月11日(土) 18:00 から 19:00 まで

入場料無料
展覧会URLhttps://anomalytokyo.com/exhibition/muneteru-ujino_sweet-home-c/
会場ANOMALY
http://anomalytokyo.com/top/
住所〒140-0002 東京都品川区東品川1-33-10 TERRADA Art Complex 4F
アクセスりんかい線天王洲アイル駅B出口より徒歩9分、東京モノレール天王洲アイル駅南口より徒歩10分、京急本線新馬場駅北口より徒歩9分、JR品川駅港南口より都営バス「天王洲橋」下車徒歩4分
電話番号03-6433-2988
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