ギャラリー58自らを「絵画者」と名乗り、70年以上にわたって絵画の可能性を追求し続けた中村宏(1932-2026)の個展を開催します。 中村は1950年代に政治・社会的事件を題材にした「ルポルタージュ絵画」を代表する作家の一人として注目を集め、戦後日本社会の世相や社会状況を鋭く映し出してきました。一貫して具象表現にこだわり、「モンタージュ絵画」「観念絵画」「タブロオ機械」など独自の方法論によってタブロー(絵画)を理論化し、セーラー服の女学生や機関車、飛行機などのモチーフを記号的に用いながら、常に新たな絵画表現を切り開いてきました。
本展ではタブロー(油彩画・アクリル画)、ドローイング、版画、スケッチブック、オブジェ、ポスター、書籍など、約100点の作品と資料を1953年から2025年まで年代順に紹介します。埴谷雄高の対談集『架空と現実』の表紙として制作した油彩画《架空と現実》(1968年)や、1970年代に八ヶ岳の山荘で制作した風景画、スケッチブックに残した構想メモや展覧会の展示プランなど、初公開となる作品と資料も展示します。また、学生時代に描いた《二人》(1953年)と、二つの身体が堅く抱擁する《無題》(1954年)は約70年ぶりの公開となります。
あわせて、挿画や装幀を手がけた書籍や児童書、展覧会の案内状、裸婦クロッキーのほか、姪の結婚祝いに贈った肖像画など、紹介される機会の少ない作品や資料も展示します。長年にわたり絵画と格闘し続けた中村宏の、その表現への真摯な問いと制作の軌跡をご覧いただきます。
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