横浜市民ギャラリー「新・今日の作家展」は、1964年の開館以来、横浜市民ギャラリーが40年にわたり開催した「今日の作家展」を継承し、同時代の表現を紹介、考察する展覧会です。今回は穴をあける、物事の本質や人情の機微に巧みに触れる、という意味を持つ「穿つ」をキーワードに、眼前や周囲にある物事をよく見ることから発したテーマを各自の視点と手法で掘り下げ、表現を展開する作家を紹介します。
畑山太志は、自身が〈素知覚〉と呼ぶ、空気感や存在感や気配などを感じ取る、身体が本来的に持っているはずの知覚を手がかりに「知覚の外にあるものにどう触れ、捉えるか」をキーワードに絵画を描いています。早川祐太は、「人間はどのように世界に存在しているのか」という問いを起点に、約10年前に患った難病のためより意識的になったという身体感覚をもとに、重力や空気、表面張力などさまざまなものの性質、現象を取り入れ、彫刻やそれらを構成したインスタレーションを発表しています。松原茉莉は写真領域が持つ環世界-すべての生物は各々の知覚によって世界を理解し構築しているという世界観-の存在に着目し、写真を水に溶かし、インクとパルプへと還元する独自の手法で制作を行っています。現代社会では多くの物や情報が私たちを取り巻いています。出品作家らが着目する対象は必ずしも見えやすいものではありませんが、私たち自身も含む存在の探求にもとづくユニークな作品は、鑑賞する人々に自身が数多のものと共存していることや忘れていた感覚を思い起こさせ、日常における新たな視点や、支点の獲得を促すことでしょう。
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