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竹川宣彰 《猫の足尾銅山花闘(桐に鳳凰)》2025年、キャンバスにアクリル、130 x 97cm

竹川宣彰 「猫の足尾銅山-光と闇」

オオタファインアーツ
終了しました

アーティスト

竹川宣彰
オオタファインアーツでは、5年ぶりとなる竹川宣彰の個展を開催します。竹川は今展で、この数年取り上げてきた足尾銅山をテーマに、猫で戯画化した花札を描きます。竹川がたびたび作品に取り入れる猫たちは、境界や障害をすり抜けてどこでも自由に往来できる象徴的な存在と見ることができますが、人間の行いを私たち自身が客観的に見るときのフィルター的役割を担っているとも言えます。その猫たちの表情が愛らしく楽しい花札は、どこか少し私達の知る絵柄と違います。それはこれが、日本が植民統治していた朝鮮に持ち込み、大流行して現地で独自に発展した花札「花闘(ファトゥ)」だからです。老若男女が楽しめるゲームとして今でもポピュラーな花札は、日本が近代化と帝国主義に邁進した時代には、常にその前線で労働者とともにあるものでした。竹川は12点の花闘のペインティングのほか、1点の立体作品を発表します。

今年、足尾銅山を経営した古河グループにより「足尾銅山記念館」が建設されます。足尾銅山は、明治時代の急速な近代化がもたらした「光」と「陰」ふたつの相反する結果をそれぞれ象徴する存在です。明治政府の富国強兵政策を背景に日本の産業発展に貢献したという「光」の側面。日本初の公害事件として世に知られる「足尾鉱毒事件」を引き起こしたという「陰」の側面。記念館ではその「光と陰」表裏一体の歴史に焦点が当てられることでしょう。一方竹川は、「光」と「陰」だけでなく、歴史の「闇」にも焦点を当てます。
日中戦争に続くアジア太平洋戦争の激化により武器の材料である銅の増産が必要になった一方、働き手が戦地に駆り出された足尾で労働者不足を補ったのは強制連行されてきた外国人でした。過酷な環境で亡くなった強制労働者を悼む慰霊碑は、今も足尾にひっそりと立っています。最も多く亡くなった当時の敵国/のちの戦勝国・中国の労働者の慰霊碑は、日中国交正常化をきっかけに鉄筋コンクリート製のものが建立されました。しかし、植民地だった朝鮮の人々の慰霊碑は、公的支援なく有志が建てた木柱の一本製のもので、今まさに足尾の山中で朽ち果てんとしています。この慰霊碑がなくなったとき、強制労働の事実を知る人がいなくなったとき、朝鮮人労働者の苦難も日本の植民地主義が冒した過ちも、全て消えてしまうのでしょうか。決してなかったことにはならない不都合な事実が、歴史として一切の光が当たらず陰にもなり得ず、このまま「闇」に葬られようとしていることに竹川は抵抗します。

朝鮮における花闘の流行には、日本の花札がそうであったように賭博に用いられ、労働者たちの娯楽になったという背景があります。猫で戯画化された竹川の花闘が見る者をニヤリとさせるように、実際の花闘や花札も、悲惨な状況を日々耐えていた労働者たちをほんの一瞬でもニヤリとさせ、大きな活力を与える重要なツールとなっていたのでしょう。竹川が花闘をユーモラスに描く行為は、存在がなかったかのように扱われる強制労働者たちにもきっとあったはずの活気に満ちた時間、そこから生まれるエネルギーを、少しでも「あったこと」として現在に再現しようとする試みと言えるかもしれません。猫の表情が楽しい花闘がもたらすバイタリティ溢れる展示をぜひご高覧ください。

スケジュール

2025年5月17日(土)〜2025年6月28日(土)

開館情報

時間
11:0019:00
休館日
月曜日、日曜日、祝日
入場料無料
展覧会URLhttps://www.otafinearts.com/ja/exhibitions/333-cats-ashio-copper-mine-light-and-darkenss-nobuaki-takekawa/
会場オオタファインアーツ
http://www.otafinearts.com/
住所〒106-0032 東京都港区六本木6-6-9 ピラミデビル 3F
アクセス都営大江戸線・東京メトロ日比谷線六本木駅1a・1b出口より徒歩1分
電話番号03-6447-1123
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