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Yoshiro Sakurai I The Presence of Absence / Gelatin Silver Print / 570 × 900 / 2025

「PORTRAIT」

STANDING PINE 東京
終了しました

アーティスト

エミリー・アンダーセン、トビアス・カッペル、櫻井啓裕、トマ・ジラン、ルーカス・フォレット・セリンスキ、平川典俊
STANDING PINE 東京では、7月5日(土)より、グループ展「PORTRAIT」を開催いたします。本展には、エミリー・アンダーセン(イギリス)、トビアス・カッペル(ドイツ)、櫻井啓裕(日本)、トマ・ジラン(フランス)、ルーカス・フォレット・セリンスキ(ブラジル)、平川典俊(日本)の6名が参加いたします。

「ポートレイト」という言葉が喚起する伝統的な肖像表現から逸脱しながらも、その本質にあらためて向き合おうとする本展では、参加作家たちによる作品が、イメージや記録、身体性、セクシュアリティ、時間といった多層的な要素を内包し、それぞれが人と作品との関係性に新たな視点を投げかけます。

エミリー・アンダーセンは、廃墟となった産業施設や都市のインテリア空間を静謐な視点で撮影し、日常の中に潜む詩情や記憶の痕跡を映し出す作品を制作しています。また、1980年代よりポートレート写真を撮り続けており、今回展示されるナン・ゴールディンをはじめ、数多くの著名な作家、詩人、映画監督、俳優、建築家たちを被写体としています。彼女の映し出す世界には、雰囲気や詩的な表現への美意識が一貫して息づいており、さらに、彼女は写真というメディアを通じて、肖像という言語、時間という概念、そして記憶の表象を探求し、日常を静止画として捉えるそのプロセスを丹念に研究し続けています。

写真が現実を写すだけのメディアではなくなった現代において、トビアス・カッペルは、イメージ制作の新たな可能性を探求しています。アナログとデジタルの中間領域を横断する彼の作品は、ジャンルの境界を超えながら、視覚表現の真正性や最終性に問いを投げかけます。「impssbl's nthng(2019)」は、オールインワン・プリンターの機能を用いて制作されたシリーズ「brother」の一作であり、スキャンや複製の過程で生じるノイズやエラーを積極的に取り込みながら、機械が視覚情報をどのように「見て」「理解するか」を遊び心と批評性をもって探ります。

櫻井啓裕による「Untitled (#5)(2025)」と「Untitled (#7)(2025)」は、2002年にパリのファッションショーで撮影されたバックステージの情景をもとに構成された作品です。オートクチュールの舞台裏に漂う緊張感や高揚感、モデルたちの繊細な表情を記録を超えた視点でとらえたこれらの写真は、23年の歳月を経て、記憶と時間が交差する静謐なナラティブとして立ち上がります。また、最新作では、「匿名性」と「集団性」そして「不在の気配」を通して人間の存在の輪郭を描き出し、アーティストの不在を感じながらも、その余韻に身を浸す彼らの姿は、記憶や感情の中に刻まれた「肖像」として浮かび上がります。そして、霧の中に浮かび上がる群衆は、それぞれが孤立しながらも、全体としては「一つの感情の塊」のように見え、個人は輪郭を失い、集合的な「気配」や「感受性」だけが立ち現れます。

空間全体との関係性に呼応し、そのネガティブスペースを浮かび上がらせるように設置されるトマ・ジランの立体作品は、彼のドローイング作品に通底する、平面と奥行きの錯覚のあいだで生まれる視覚的相互作用と対をなしています。空間そのものを一つの自律したアイデンティティとして捉えるとき、そこに設置されたこの作品が立ち上げる空間的な存在感は、まるで空間そのもののポートレイトを描き出しているかのようです。

ルーカス・フォレット・セリンスキの作品は、身体を束縛と解放の場として見つめ、クィア・セクシュアリティに焦点を当て、快楽のニュアンスと身体体験による強烈な感覚について考察します。そして、ジュエリー制作やテキスタイル、アナログ写真、手焼きプリントといった手作業を重視した技法を用いることで、身体をめぐる感覚的な体験を物質性をもって表現しています。より親密な世界を描き出したモンタージュ写真シリーズ「La Petite Mort」では、快楽、愛、死といった根源的なテーマに詩的にアプローチし、感覚の極限に触れるような瞬間を繊細に捉え、アナログモンタージュ写真、多重露光、シルクスクリーン、写真をほかのメディウムに移行するフォトトランスファーといった技法を駆使しながら、BDSMの恋人や友人たちを映し出した視覚的なイメージと、裸身であり、官能的である一般的な芸術彫刻を重ね合わせることで、プライベートで親密な刹那と典型的な身体表現との対話を生み出しています。

平川典俊は、ユング心理学における「アニマ」の概念を出発点に、女性が自身の内に抱える男性像=アニマを被写体として演じることに着目した写真シリーズ「The anima’s talent」を制作しています。アニマを単なる女性像の元型ではなく、内面に潜む男性性として捉え、女性がその役割を引き受けることで、逆説的に「内面に存在しない女性性=他者としての男性性」を演じるプロセスが浮かび上がります。本シリーズでは、歌舞伎や宝塚といったジェンダーの演技的伝統にも言及しながら、快楽やアイデンティティの構造にアプローチします。今回の出品作では、南明奈がその「アニマ」の被写体を演じ、写真の中で女性性と男性性の揺らぎを可視化するものです。

本展覧会を通して、彼らの作品と対峙するなかで浮かび上がる「差異」は、鑑賞者の個人的な記憶や経験と結びつきながら、肖像という表現形式のあり方を静かに問い直します。

スケジュール

2025年7月5日(土)〜2025年7月26日(土)

開館情報

時間
12:0018:00
休館日
日曜日、月曜日、祝日

オープニングパーティー 2025年7月5日(土) 17:00 から 19:00 まで

入場料無料
展覧会URLhttps://standingpine.jp/exhibitions/204
会場STANDING PINE 東京
https://standingpine.jp/
住所〒140-0002 東京都品川区東品川1-33-10 TERRADA Art Complex Ⅰ 3F
アクセスりんかい線天王洲アイル駅B出口より徒歩9分、東京モノレール天王洲アイル駅南口より徒歩10分、京急本線新馬場駅北口より徒歩9分、JR品川駅港南口より都営バス「天王洲橋」下車徒歩4分
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