なかなかの東京・東中野の閑静な住宅街。奈良より続く家元・梅若家により観世流一門の公演の場とされてきた梅若能楽学院会館という神聖な「ハレ」の場と、能楽堂に隣接し、日常的な「ケ」の空間にフォーカスし営業するカフェ・なかなかの。中野氷川神社例大祭前夜の9月6日から14日の日没後、「ハレ→ケ」への移行(トランスポート)をおこなう展覧会《ケからZ ー能楽、風景、観光ー》を開催します。
相反するのものでありながら、二つで一つの世界/時間をあらわし、明確に区分がなされてきた「ハレ」と「ケ」。従来その棲み分けを行うことで神聖で非日常の世界と日常とを行き来し「ケガレ(気枯れ=日常生活を営むためのケのエネルギーが枯渇すること)」を回復、生きるためエネルギーを循環していたといわれています。しかし現代の日本、とくに都市・東京においては、資本主義経済のメカニズムによって「ハレ」の場が、観光やエンタメ等のように日々大量に作り出され消費されるようになりました。その結果、ハレとケの区別は曖昧になり、「ケ」の状態に止まることは少なくなっています。
一方、日常(=生活)である「ケ」は反復することで形作られ、さまざまな反復運動が並行して行われることでバランスを保っています。(たとえば「歩く」行為は右足と左足を交互に前に一歩踏み出す反復運動です。人々は歩きながらもさまざまな場所に視線をむけ、スマホを操作し、カフェではたらくスタッフはコーヒーを淹れながら注文を取り、かたや机を片付けて食器を洗いながら会話します)そして「ハレ」の舞台である能楽を見ているとき、若干うとうとしている状態は必ずしも否定することではありません。俗説では「夢うつつ」といって寝たり起きたりを繰り返すことによるトランス状態であるともいわれています。また、能楽ではある条件が揃うことで人間ならざる存在に出会い、異界への旅に「迷い込む(うつつの状態に陥る)」ことで物語が進んでゆきます。
そこで本企画では「ハレ」が続いているという状態ともいえる今日、「うつつとしてのZ」にフォーカスし、能楽の空間や物語の構造を「ケ」に転用し近隣を巡り観光をすることで、都市空間における「ハレ→ケ」への移行(トランスポート)を行います。そしてコラボレーターと共に、この都市・東京における「休憩」や「ケア」という日常に潜んでしまった「ケ」の観測と都市空間の編集を実践します。
会期は9月6日―14日の日没後。「ハレ→ケ」への移行を行う観光ツアーは9月7日(土)、8日(日)、14日(土)日没―20時に開催されます。寄り道がてら、ゆるりとお越しください。
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