柏木瑠河は、作品展示やコミッションワークなど、写真表現を軸に活動するアーティストです。日常で見慣れてしまった物や、一見すると混沌として見える事象の中から局所的なルールを見つけ、画面上で再構築し、オブジェクトを組み立てる手法で作品を制作しています。2021年にはJAPAN PHOTO AWARDにて太田睦子(IMA エディトリアルディレクター)賞を受賞。近年発表した「Objects in Flux」シリーズでは、写真作品に加え、物質の不安定さや変化のプロセスを探求する映像作品にも取り組んでいます。
本展「Emergence」では、前作「Objects in Flux」で扱われた〈流動する物たち〉のその先へと視線を向けた作品を発表します。拾い上げられた廃材や日用品といった、一度役割を失い、ただそこに存在している「物」を、カメラを通じて継続的に観察していくと、形や重なりが少しずつ変化していき、まるで呼吸しているかのような気配を帯びていきます。やがて撮影は、自然の中に存在する動物や虫、風や光といった“動く存在”を追うドキュメンタリーへと移行し、「物」を見つめる行為は、いつの間にか「生」を追う行為へと変化していきます。 静止した物質から立ちのぼる“生の兆し”や“世界の微細な呼吸”を記録する試みは、物質と生命の境界が揺らぐ瞬間を可視化し、鑑賞者が自然の中で「観察者」へと立ち戻ることを促します。
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