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[画像: 松本ルリ《Broken Line hidden colors navy white》 2023年 キャンバスにアクリル 1300㎜×1700㎜]

松本ルリ 「hidden color, thread, space」

GALLERY KTO 原宿
終了しました
GALLERY KTO 原宿では、ドイツ・デュッセルドルフを拠点に国際的な活躍を続ける松本ルリ(1981-)の、個展「hidden color, thread, space」が開催されている。

松本の作品は、ドイツの現代美術館Museum MARTa Herfordや、オランダの歴史あるRijksMuseum Amsterdamに収蔵されており、ヨーロッパを中心に高い評価を得ている。昨年末から今春まで、フィアネンの市立美術館で開催されたモンドリアンの生誕150周年を記念したグループ展への出品や、エッシャー美術館で開催中のグループ展への参加も、松本の注目度の高さを示しているだろう。

今回、GALLERY KTO 原宿の個展には、黒いサマーウールを用いた糸のインスタレーションが出品されている。向かい合う壁を繋ぐ計32本の黒い糸は、しばしば交錯している。
しかし、交錯する糸の前後関係は、それが「黒色」であるためにあまり明確ではない。というよりむしろ、激しく交錯する部分では、すべての糸が私から等しい距離の位置にあるように感じられる。つまり、このインスタレーションは鑑賞者の目を戸惑わせ、その錯視性によって広がりある空間を圧縮しているようにも思えるのだ。

次に絵画に移ろう。松本が絵画を本格的に制作し始めるのは、インスタレーションという形式を経た後だ。本展には、白い部分の目立つ大きな作品が2点出品されている。これは一体何なのだろう。
ひとまずこの白は、マスキングテープの上に塗られた白いアクリル絵具であると言える。そして、画面に散らばる鮮やかな色彩のラインはテープの下層にある色だ。松本の場合、下地を残している、のではなく、大胆に色彩を隠している。
ちなみに、色彩のラインは速乾性のあるアクリル絵具で描かれており、そのラインを重ねていく松本の制作スタイルに適している。
もう少し近づいて白い部分を見る。すると単調に思える白い面も、多様な表情をもっていることがわかる。とりわけ凸凹したシワが気になる。マスキングテープを貼る際に付けられたであろうこのシワは、画面にアクセントをもたらす。他にも、色彩のラインの一部に剥落を感じさせる箇所がある。さらに、作品の側面に目を向けるとアクリル絵具が膨らみをもって佇んでいることもある。フラットな美しい表面が特徴的な松本作品も、じっくり眺めれば、上のような多様な質感を味わうことができる。
最後に白い部分と鮮やかな色彩部分の関係について確認したい。すでに述べたように、マスキングテープを介して、色彩は白の下層にある。カンヴァス地の色を想起させる白こそ色彩よりも鑑賞者の近くにあるのだ。このことは、またしても、作中の各部分の前後関係乱し、見るものを混乱させる。
「黒」の糸と「白」の絵具、一見シンプルに思われる二色を軸に展開されるGALLERY KTO 原宿の松本ルリ展に是非お越しいただきたい。松本作品によって惑わされた目は、新たな空間に私たちを誘い込むだろう。

スケジュール

2023年11月18日(土)〜2023年12月26日(火)

開館情報

時間
13:0018:00
休館日
水曜日、木曜日、金曜日
入場料無料
会場GALLERY KTO 原宿
https://www.kto-gallery.com/
住所〒150-0001 東京都渋谷区神宮前4-25-7 ​コーポK 103
アクセス東京メトロ千代田線・副都心線明治神宮前駅5番出口より徒歩5分、東京メトロ半蔵門線・千代田線・銀座線表参道駅A2出口より徒歩約7分、JR山手線原宿駅竹下口より徒歩8分
電話番号03-6881-9936
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