大阪日本民芸館棟方志功(1903-1975)は青森県に生まれた版画家です。ダイナミックで生命力に溢れる作品の数々は国内外で高い評価を受け、生涯にわたり日本を代表する版画家として活躍しました。
そんな棟方は、1945年から1951年までの戦中戦後、富山県福光町(現南砺市)に疎開していました。富山県は浄土真宗が盛んなことから「真宗王国」として知られ、福光もまた信仰の篤い地域です。この地と棟方を結びつけたのは、民藝運動で得た人脈でした。
疎開者として移住した棟方一家を福光の人々は温かく迎え入れ、制作に関しても手厚く支援しました。棟方もまた、福光の土地とそこに暮らす人々へ感謝と親愛をもって接し、福光に取材した数々の作品を手掛けました。それは紙やキャンパスだけではなく、住居兼工房とした「鯉雨画斎」内の壁面や板戸には、滝を上る鯉や観音像が描かれ、今も大切に保存されています。さらに、棟方は福光で多くの文化人や宗教家とも親交を重ねました。この出会いによって作品は宗教的な深みを獲得し、戦後の「世界のムナカタ」の躍進へと繋がっていきます。
本展では南砺市立福光美術館の収蔵作品より、福光時代の版画、倭画を中心に紹介します。この時期の福光を題材とした作品には、周囲を囲む豊かな自然や人々の営みの風景が生き生きと描き出されています。困難の多い時代ではありましたが、そこには棟方と福光の自然や人々とのあたたかな交歓の日々をうかがうことができるでしょう。
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