東京大学 本郷キャンパス本企画は、「没入(immersive)」とそれを可能とする「イマーシヴ・メディア」をめぐる、アーティストによる作品展示と研究者による研究発表を組み合わせた展示イベントである。
我々を取り巻くテクノロジーの視聴覚分野においては、仮想現実や拡張現実など仮想と現実の境界を曖昧にし、さまざまに呼び名をチューニングしながら私たちの現実を侵食するような技術の発展が目覚ましい。実際、多くのアーティストがメディウムとしてARやVR、ビデオゲームを用いるだけではなく、鑑賞者を包み込むような多面的映像インスタレーションは世界の芸術祭で最も頻繁に目にする展示形態である。エンターテイメント分野では、イマーシヴ・アート(immersive art)という名で360度の大型スクリーンがゴッホやモネの名画に入り込むような経験を提供し、お台場に新設されたイマーシブ・フォート東京はリアルタイムで進行する演劇空間に参加するプレイヤーとして今ここで起きているイベントへの没入的な参加を求められる。ウォルト・ディズニー社は全方向対応の拡張可能な動く床「ホロタイル(HoloTile)」によって、仮想空間の身体の可動に現実の身体の可動を同調させる没入体験を実装しようとしているのだ。「イマーシヴ(immersive)=没入」とはテクノロジーの問題にとどまらず、広く視聴覚・身体的な文化芸術活動においてのこれからの未来を最も指し示す言葉でもある。私たちは現在、テクノロジーのもたらす環境への没入に引き寄せられているのだ。
本企画では、このイマーシヴという問題に対し、没入の体験を従来のTech企業が行っているような手法とは異なる現象として組織し作品として展開するアーティストと、美術史研究を通して現代美術における没入の経験を論じる研究者による共同展示によって、現代におけるイマーシヴ(没入)メディアと経験、視聴覚環境におけるそれらが現代社会においてどのような可能性を生み、これからの我々の経験を変えていくのか、美術の側から考察したい。
美術制作系の学科がない東京大学での美術展の開催はそう多くはない。今回、会場として選ばれた東京大学の総合大学としての学際性を活かし、研究者やアーティストをゲストに招いたトークイベントを展示に合わせて連日行う。
展示最終日にはゲストに東京大学総合文化研究科准教授・松井裕美氏(美術史研究)を招待しトークを行う。
作品上映やトークプログラムの間の時間では、展覧会会場内に設置された他作品や、リサーチポスターの観覧も可能となっている。
会場: 東京大学情報学環オープンスタジオ 中山未来ファクトリー
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