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鈴木操 「fortunes」

TAV GALLERY
終了しました

アーティスト

鈴木操
鈴木操は、2015年のTAVGALLERYにおける初個展「記憶喪失の石灰」以来、漆喰を素材とした作品を発表し続けてきた。石灰と書いて「せっかい」と読むのは漢音で、これを唐音では「しっくい」のように読んだらしく、漆喰という表記は、その当て字だという。調湿性をもち、環境条件に応じて水分を吸収したり放出したりする漆喰は「呼吸する」と言われ、その原料である煆焼した石灰岩が「生石灰」とも呼ばれるように、石灰ないし漆喰という材質は「生命」と結びつけられてきた。

2016年に「私戦と風景」(原爆の図丸木美術館)で発表した《夜よりも長い蛭の群れ》という作品のタイトルに表れているように、鈴木は、柔らかく不定形な漆喰による造形を蛭という無脊椎動物に喩える。得体の知れない何かが湧いてくるような気味の悪い感覚は、石灰の調査で鍾乳洞を巡りながらアーティスト自身が体感してきた感覚なのかもしれないし、あるいは石灰という堆積岩それ自体がもつ生物学的あるいは地質学的な記憶なのかもしれない。

石灰の「生」にまつわる時間は、私たちの人生に即した時間の感覚と全く異質だが、漆喰という素材と向き合うことは、手という肉体の端末を通じて自分自身を見つめなおすことでもあったはずだ。たとえば、私たちの体内に共生している常在菌などの微生物、あるいは神経系や免疫系、循環器や消化器といった自らの肉体を成り立たせているシステム、ひいては遺伝や輪廻転生といった個人の「生」を超越した法則との関係から自己を捉えなおすとき、個々の存在がもつ属性は、他者としての世界に開かれた運勢的な様相を呈する。

鈴木は、ユニセックスブランドBALMUNGと2021年の秋冬、2022年の春夏シーズンでコラボレーションを行うなど、ファッションと彫刻という分野を跨いだ制作も続けてきた。両者の共通項として思い浮かぶのは「身体」だが、歴史的に見れば、いずれにおいても想定されていたのは抽象的ないし理想的な人体であり、具体的な個人の身体は蔑ろにされてきた。アカデミックな彫刻の方法論が、西洋伝来の人体を前提とした造形論(アンソロポモルフィズム)の一環であるとすれば、伝統的に用いられてきた心棒や棕櫚縄は、脊椎動物の骨格のようである。また、従来の身体性を覆すような優れたファッションデザインが「身体的」というよりも「彫刻的」な実践であるとすれば、鈴木の制作は、「身体的」でも「彫刻的」でもない不連続な位相に見出される、流動的な実存の表現に関わっていると言える。

今回の個展では、漆喰と風船を使った《Deorganic Indication》シリーズを中心に、蛭というモチーフを作り手の象徴である手と重ねた新作の写真シリーズ《分裂する蛭、私の手》もあわせて発表する。実存的なリアリティの表現に、いつか割れるかもしれない偶然性という外的な要因をとりこんだ作品は、私たちが立っているこの大地という巨大な体系に孤独な存在が接続する可能性を提示している。

スケジュール

2023年8月25日(金)〜2023年9月10日(日)

開館情報

時間
13:0020:00
休館日
月曜日、火曜日

オープニングパーティー 2023年8月25日(金) 19:00 から 21:00 まで

入場料無料
展覧会URLhttps://tavgallery.com/fortunes/
会場TAV GALLERY
http://tavgallery.com/
住所〒106-0031 東京都港区西麻布2-7-5 ハウス西麻布4F
アクセス東京メトロ千代田線乃木坂駅5番出口より徒歩9分、東京メトロ銀座線・半蔵門線・千代田線表参道駅A5番出口より徒歩11分、東京メトロ日比谷線・都営大江戸線六本木駅1a出口より徒歩11分
電話番号080-1231-1112
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