タカ・イシイギャラリー フォトグラフィー / フィルムタカ・イシイギャラリー フォトグラフィー / フィルムでは8月3日(土)から9月14日(土)まで、日本の写真表現の転換 期に重要な役割を果たし、今も国内外で現代の写真表現に大きな影響を与え続けている写真家・批評家の中平 卓馬の個展を開催いたします。タカ・イシイギャラリーで初となる本展では、1960年代半ばから2010年代初頭に至 る中平の50年近くにおよぶ軌跡から、1970年代前半、カラーで都市や都市的な建築をテーマにした写真をより意 識的に発表していた時期にフォーカスいたします。
写真家として活動を始めた当初より、中平は消費社会のなかで増殖し続ける写真というメディアそのものを批評的 に問い直していきました。60年代末から最初の写真集『来たるべき言葉のために』(1970年刊)に至る時期は、そ れまでの写真美学を否定するような過激な表現のモノクロ作品を主に雑誌メディアで多数発表。ブレたりボケたり することによる曖昧な輪郭、粗い粒子や傾いた構図を特徴とするその作品は、新しい写真表現として注目され、戦 後日本写真の大きな転換点を代表する作品でもあります。しかし、1970年の安保改定や大阪万博を経て、停滞す る反体制運動や社会変革運動の状況下で、中平は一見緩慢な鎮静に向かう社会にいかに亀裂を生じさせるかを 思考するなか、1973年に「なぜ、植物図鑑か」を執筆。そのエッセイで自身の初期作品をあえて自ら否定すること で、新たな転換へとさらなる模索を始めます。今回展示する《氾濫》および同時期に都市を捉えた作品は、中平に よるその一つの回答として見ることができます。
1974年に東京国立近代美術館での「15人の写真家」展へ出品した《氾濫》は樹脂ボードに直張りされたカラー写 真48点からなる横方向6メートル、縦方向1.6メートルにおよぶインスタレーション作品。1969年から1974年の間に 雑誌で発表された作品を含むその写真群は、いずれも全体性を欠いた都市の断片を被写体とし、脱中心的なア サンブラージュのように壁面構成されています。壁を這う蔦、路上のマンホール、ガラス越しにみる水槽の鮫、地 下鉄構内など、情報と事物が氾濫する都市空間に潜む、暗部、亀裂や欠損、あるいは異物に触感的に眼差しが 向けられています。本展では《氾濫》と併せて、都市論的作品として『アサヒカメラ』1975年1月号に発表された「都 市・陥穽」のために撮影されたカラー写真、また1973年に『朝日ジャーナル』に掲載された地下鉄構内のモノクロ 写真なども展示いたします。
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