iti SETOUCHISetouchi L-Art Project(SLAP)は、第5回アーティスト招聘プロジェクトとして、広島県尾道市在住のアーティスト、小野環氏による個展「百蝙蝠」をiti SETOUCHIで開催します。
小野は、20年以上にわたり尾道を活動拠点としてきました。アートを通じた地域資源の再考・再生を主眼に置き、作品制作をはじめ、AIR(アーティスト・イン・レジデンス)や空き家再生などのプロジェクトに取り組んでいます。「百蝙蝠」と題した本展では、福山市出身の建築家・武田五一が策定に携わった、福山市の市章に着目します。
築城400年の歴史を誇る福山市のシンボル・福山城は、かつて「蝙蝠山(こうもりやま)」と呼ばれた地に建てられました。「蝠」は「福」に通じることから「福山」と名付けられ、市章の由来にもなっています。武田が選定した蝙蝠山のデザインは、100年以上にわたり福山市を象徴するマークとして受け継がれています。
小野は、展示会場となるiti SETOUCHIの壁や柱、天井、吹き抜けなど、普段注視することのない建物のさまざまな場所に市章の「こうもりマーク」を配します。また、そのマークを施した様子を記録した写真をコワーキングスペース tovioで展示し、小野が収集した市章の映り込んだ古写真も併せて公開します。来場者は、館内に潜むこうもりマークを探索する過程で、自ずと建物の構造や来歴に目を向けることになります。
第二次世界大戦末期の空襲で壊滅的な被害を受けた福山は、戦後の復興を経て、今日の駅前再生事業に至るまで、時代とともに絶えず変化を遂げてきました。展示会場となる建物もまた、1992年に百貨店として開業し、複数の事業者の手を経ながら再生を繰り返してきました。
現在のiti SETOUCHIは、2022年のリノベーションによって、百貨店の面影を残しつつ新たな空間へと生まれ変わりました。設計に際しては、既存の構造や地域産業を反映した素材を活かし、施設には都市が辿ってきた歴史を語る痕跡が多く残されています。本展は、福山市の市章というモチーフを起点にして、空間の知覚のあり方や都市の変遷を見つめ直す機会となるでしょう。
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