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唐菱瓏 「内なる神殿」

Moon Gallery & Studio
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アーティスト

唐菱瓏
唐菱瓏は、中国の中央美術学院卒業、現在は日本茨城県と中国珠海を拠点に活動しているアーティストであり、パフォーマンスアート、映像、テンペラ、フレスコ画など主な表現手段を通して、地域社会への介入と神秘主義的儀式の関係性を探求している。

古来より、宗教や神秘主義の諸体系において、「身体」はしばしば神聖なる容れ物として語られてきた。それはまた、「内なる道(Inner Path)」へと至るための媒体でもある。聖書『コリント人への手紙 』には「あなたがたのからだは聖霊の宮である」と記されている。物質としての肉体は、ここで初めて神性の宿る「神殿」として再定義されるのだ。

本展の中心作品は、「ワタリガラスの内耳迷路」に着想を得て制作されている。古来、ワタリガラスは死と再生、予兆をもたらす存在として多くの神話や伝承に登場する。その内耳迷路(空間認識と平衡感覚を司る器官として)の構造は、まるで抽象的な秩序を宿しているかのようである。彼女は、この不可視の構造をデジタルモデリングで再構築し、古典的なテンペラ技法によって描き出すことで、科学と宗教の狭間に、新たな「視覚の神殿」を立ち上げようと試みる。

作品群は、個別の生物的構造を神聖視することにとどまらない。次は、より根源的な問いは「意識はいかにして生まれたのか?」へと踏み込む。彼女は、時を3億6千万年前まで遡り、肺魚の脳皮質を持たない原始的な神経構造に注目する。水から陸へと生命が移行した、その決定的な一歩を担った部位である。それは神からの啓示ではなく、進化の繊細な一幕にすぎない。だが、そこには確かに「意識」というものの到来を告げる気配がある。

「内なる神殿」は、私たちが当然のように抱く「意志」「魂」「身体」への認識に揺さぶりをかける。意識は、もはや脳の一部に閉じ込められた活動ではなく、むしろ血肉、骨、器官、空間の構造の中に分散して潜み、流れ、響いているのではないか、そんな問いが、観る者に投げかけられる。

身体は意識の限界ではなく、むしろその通路であり、神性もまた、天上や来世に置かれるべきものではない。それは、生理的な構築物の奥深くに、静かに、そして確かに息づいている。

スケジュール

2025年8月7日(木)〜2025年8月11日(月)

開館情報

時間
13:0019:00
入場料無料
展覧会URLhttps://www.moon-gallery-studio.com/blank/tang-ling-long-ge-zhanneinaru-shen-dian
会場Moon Gallery & Studio
https://www.moon-gallery-studio.com/
住所〒110-0014 東京都台東区北上野2-3-13 上野ダイカンプラザ 1F
アクセス東京メトロ銀座線稲荷町駅より徒歩8分、東京メトロ日比谷線入谷駅1番出口より徒歩8分、JR上野駅入谷口より徒歩9分
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