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MAHO KUBOTA GALLERYでは、2026年1月21日より、若手アーティスト・高橋知裕による新作個展「Make Me Art!」を開催いたします。 高橋知裕の絵画は、既存の事象やイメージの世界をそのまま再現・表象するものではありません。高橋の制作の根底には、演劇的な構造を備えた、彼自身の内側に立ち上がる自立した世界観があります。その世界の中で、彼の「よりしろ」であり、時に友人でもあるキャラクターたちが、それぞれの役割を担いながら存在しています。 高橋はまず、映画のセットを組み立てるかのように、箱庭的な世界を実際に制作します。紙によって建築要素や室内のモチーフを作り、そこにぬいぐるみやおもちゃといった身近な存在を配置することで、現実とは異なるスケールと論理をもつ仮想の空間——ひとつの小さな世界——を立ち上げていきます。この行為は、完成された世界を設計するというよりも、遊びの延長線上で世界を試行錯誤的に立ち上げていくプロセスに近く、構築と遊戯が不可分なかたちで進行します。その後、高橋はその世界を俯瞰する視点から絵画として描き出します。静止した空間として構築された箱庭に、絵画という行為を通じて、あらためて時間や気配、生命のようなエネルギーを吹き込み、独自の作品へと昇華させていくのです。 こうした制作手法の背景には、高橋が関心を寄せてきたアニミズム的思考があります。自然界のあらゆる存在に魂や意志が宿るとするアニミズムの感覚に基づき、高橋は、ぬいぐるみやおもちゃといった本来は無生物とされる存在に命を与え、語りかけ、関係を結びます。そのやりとりは、信仰や儀式というよりも、むしろ遊びに近い軽やかさを帯びています。作家とモチーフとの間に生まれる対話やコミュニケーションの積み重ねが、やがてひとつの世界観を形づくり、その世界が再び絵画として立ち現れます。一方で、そうしたコミュニケーションの気配は、一見すると子どもが描いた落書きのようなナイーブな描画によって視覚化され、シュルレアリズムにおけるオートマティズム・ドローイングのように機能しながら、アニミズム的な生命感を補強しています。 昨年、高橋は学生時代から過ごした京都の街を離れ、東京にスタジオを移しました。環境の変化は想像以上に高橋の心境にさざ波を立て、引っ越してからの数ヶ月は、それまでのように想像の中で自立した世界を構築することすら難しい日々を送ったといいます。そうした日々は、スタジオ近くの神社に通い、静かに祈りを捧げることで、徐々に落ち着いていったようです。八百万の神があらゆるものに宿るという日本古来の自然崇拝をあらためて意識する中で、高橋の作品世界に生きるキャラクターたちも、少しずつエネルギーを取り戻していきました。 本展タイトル「Make Me Art!」は、作家自身の制作衝動を示すと同時に、キャラクターたちや無生物たちが発するかのような声にも重なります。——「私をアートにして!」。遊戯の中で命を与えられ、関係を結ばれた存在たちが、主体的に世界に関与しはじめる瞬間です。こうして新たな生命感を帯びたキャラクターたちが存在する高橋の絵画は、もはや二次元的な世界にとどまらず、質感や触覚、さらには鑑賞者の行為や想像と相互に呼応し合うマイクロコスモスとして立ち現れます。高橋知裕の新たな実験の場を、ぜひご高覧ください。
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